2. 新しいクロスプラットフォーム戦略の真の目的は何か
今のMicrosoftは頻繁にほかのプラットフォームについて言及している。これは、Nadella氏がCEO就任後に最も大きな影響を及ぼした分野だ。「Microsoft Azure」は非常にLinuxフレンドリーになった。Microsoft Officeは、「iOS」版と「Android」版が発売された。同社はBuild 2015で、iOS開発者とAndroid開発者にとって自分たちのアプリをもっと簡単にWindows 10に移植できるようにすると述べた。「Microsoft Band」は「iPhone」とAndroid、「Windows Phone」で同じように動作する数少ないウェアラブルデバイスの1つだ。
これらすべてのことから、現在のMicrosoftは以前よりはるかに友好的な企業に思える。SalesforceのCEOを務めるMarc Benioff氏はNYTに、「Satya氏が率いるMicrosoftは、人々と協力することに対して、これまでよりはるかに心を開くようになった」とさえ述べている。
しかし、先述した事例には、それぞれ異なる動機がある。心を開いたMicrosoftはどこに向かおうとしているのか。そして、同社はクロスプラットフォーム企業であることにどれだけ真剣に取り組んでいるのだろうか。クロスプラットフォームは同社のDNAにはない考え方だ。Microsoftがこんなことをしているのは、今は負け犬だからだ、と皮肉な人は言うだろう。新市場で支持を得ることに成功したら、同社はクロスプラットフォーム企業になると約束したことを後悔するのだろうか。これについては、今後の展開を注視する必要がある。
3. どうやって「HoloLens」が次の「Courier」になるのを避けるつもりなのか
テクノロジの世界は、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)で重要なのはゲーミングやヘッドアップディスプレイ(HUD)ではない、ということに気づきつつある。重要なのは、それらが人間とコンピュータのインターフェースの未来であるということだ。そして、われわれの認識や期待が変わりつつある最大の理由の1つは、MicrosoftのHoloLensにある。HoloLensは、ARの潜在能力と3Dユーザーインターフェースの可能性を示す、これまでで最高のデモンストレーションである。
しかし、Microsoftは派手なデモを上手くやってのける方法を承知している。タブレットPCはデモでは信じられないほど使いやすそうに見えた。「Windows Vista」はデモでは派手で楽しく、画期的なものに見えた。そして、すべてのテクノロジ製品のデモにおける女王ともいえるのが、結局発売までこぎ着けることができなかったことで知られるCourierタブレットだ。
HoloLensはデモでは素晴らしいものに見えるが、商品化までに解決しなければならない問題が多数存在するのは明白だ。HoloLensによって、Microsoftは決して実際の製品にはならない、達成も実現も不可能なビジョンを私たちに示したのだろうか。発売までこぎ着けた場合、HoloLensはWindowsコンピュータとだけ連携するのだろうか。それとも、AppleやGoogleのエコシステムもサポートするのだろうか。実際に未来のユーザーインターフェースの新標準を作り出すことができるのだろうか。そしてMicrosoftはそれを中心に事業を構築することができるのだろうか。
はっきりしていることが1つある。HoloLensは、Microsoftが現在取り組んでいるものの中で最も心惹かれるものだ。そして、HoloLensに対するMicrosoftのビジョンとロードマップを理解することは、今後のMicrosoftに注目するうえで、最も興味深いこととなるだろう。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。