米Appleと米IBMが先頃、日本郵政グループと日本の高齢者向けサービスに関して提携を結んだ。協業関係にあるAppleとIBMは今後、多様な分野でこうした形の提携を広げて“ダブルブランド”の価値を一層高めていくのではないか。
日本郵政が“ダブルブランド”と提携
Apple最高経営責任者(CEO)のTim Cook氏、IBM CEOのGinni Rometty氏、そして両氏の間に日本郵政取締役兼代表執行役社長の西室泰三氏。3氏が満面の笑みを見せている写真が何とも印象的である。
3社は先ごろ、Appleのタブレット「iPad」にIBMが開発するアプリケーションを搭載し、日本郵政グループが日本で展開する高齢者向けサービスに適用していくことで提携した。
高齢者向けに開発されたアプリケーションとiPadを活用した実証実験を行った後、日本郵政グループは2020年までにサービスを段階的に増やしながら、日本国内の400万から500万人の顧客に対して提供していくことを目指すとしている。
西室氏は今回の提携について、「当社はテクノロジ分野において世界で最も評価の高い2社とパートナーシップを結んだ。これにより、日本のシニア世代が世界とつながり、そのつながりが深まることにより当社のビジネスが広がり、そして日本の社会や経済を強化する新たな手段を発見することを期待している」と、大きな意義があることを強調している。
3社の提携内容の詳細については関連記事を参照いただくとして、今回の3社提携のベースとなっているのは、AppleとIBMが昨年7月に発表した企業向けモバイルサービス分野での戦略提携である。つまり、両社にとって今回の3社提携は、まさしく“ダブルブランド”を生かした新たな取り組みとなる。
モバイルサービスの拡大を図るダブルブランド戦略
しかも対象となる高齢者向けサービスは、日本に限らず、先進諸国を中心に世界共通のニーズでもある。その意味では今後、日本郵政だけでなく、世界各国の有力なサービス提供会社とも提携関係を広げていくことが容易に想像できる。
さらに今回の高齢者サービスと同じように、モバイルを活用して世界共通のニーズに対応するという観点からすると、ビジネスをはじめ医療や教育などさまざまな分野での需要が考えられるだろう。そのさまざまな分野において、世界各国の有力なサービス提供会社と提携した際に、今回のように大々的な発表を行えば、ダブルブランドの威力がますます世界に浸透していくのは間違いない。
提携した有力なサービス提供会社にとっても、西室氏と同様「当社はテクノロジ分野において世界で最も評価の高い2社とパートナーシップを結んだ」と語り、自社のブランド力がアップすることを大いに期待するだろう。
かくして、AppleのCook氏とIBMのRometty氏、そして両氏の間に有力なサービス提供会社の経営トップが入り、3氏が満面の笑みを見せる写真が増えていくのではないか。これこそ、企業向けモバイルサービスを大きくリードしたいAppleとIBMのしたたかなダブルブランド戦略といえよう。
(左から)Apple CEOのTim Cook氏、日本郵政取締役兼代表執行役社長の西室泰三氏、IBM CEOのGinni Rometty氏