自社の国際化は真に必要な取り組みかを検証することも必要
IT産業として日本からタイやベトナムを見た場合、確かにベトナムでのオフショア開発は引き続き注目を浴びています。また、大手のベトナムIT企業ではシリコンウエハの開発といったハードウェア寄りの業務も開始することで、ソフトウェアとの統合開発の優位性を模索し始めるといった新しい動きも出てきています。
一方、タイではどうでしょうか。これだけ日系製造業が集中しているタイでは、これらの工場内で使用するための業務用システム開発に対する需要や、新しい開発に関する動きもあるはずですが、残念ながら今回は特段のことを聞くことができませんでした。
私の今回の情報も断片的なものかもしれません。海外での現地の動きはすべてが簡単に分かるものではないため、現地の状況が日本側の想定外だったというケースも多く出てくることでしょう。しかも、日本国内のIT企業にとっては、海外を活用することが必ずしも最善であるとは限らないようです。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が4月24日付で公表した「IT人材白書2015 新たなステージは見えているか」によると、IT 企業が人材不足に対して実施している取り組みの中心は、「新卒採用の拡大」「中途採用の拡大」が中心で、オフショアやニアショアへの取り組みは比較的少ないようです。国際分業でソフトウェアを作成することにより、日本人エンジニアの成長にもつながっていると個人的には考えていますが、今ある案件を解決するには手間がかかり過ぎるというところかもしれません。
一方で、継続的に発生するパッケージソフトのカスタマイズ作業といった分野では、オフショア開発を活用することは非常に大きなメリットになることは明らかです。
「国際化」「グローバル化」という言葉に踊らされず、また、ベトナムを含め流行りの国に飛びつくということではなく、「真に自社に必要なリソースを確保する手段は何のか」をまずは吟味することが肝要でしょう。
- 古川 浩規
- インフォクラスター
- 内閣府及び文部科学省で科学技術行政等に従事したのち、平成20年に株式会社インフォクラスター、平成22年にJapan Computer Software Co. Ltd.(ベトナム・ダナン市)を設立。情報セキュリティコンサルテーション、業務系システム構築、オフショア開発を手掛けるほか、日系企業のベトナム進出に際して情報システム構築や情報セキュリティ教育等を行っている。資格等:国立大学法人 電気通信大学 客員准教授(所属:研究推進機構 研究推進センター 国際連携推進室)、日本セキュリティ・マネジメント学会 正会員、情報セキュリティアドミニストレータ、財団法人 日本・ベトナム文化交流協会 理事