グーグルが主催する、企業や組織のリーダーを対象にした働き方をテーマにしたイベント「Google Atmosphere Tokyo 2015」が6月17~18日に開かれた。“「働き方のこれから」が、ここで見つかる。”をキャッチフレーズにモバイルやクラウド、ネットワークなどテクノロジを活用した新しい働き方の取り組みの最新事例を紹介する講演や展示などが行われた。
その中の1つとして、「徹底検証 Google Appsのテクノロジが企業・組織の課題をどのように解決できるか?」と題して行われたセッションでは「Google Apps」を導入し、ワークスタイルの変革を試みる、日本を代表する製造業者大手3社のIT部門のリーダーが出席し、組織の課題をどのように解決し、現在どのように活用しているかなどについて、自社の事例を紹介した。グーグルのGoogle for Workセールスサクセス プロダクトリージョナルリードを務める椎名エバレット弘氏がモデレーターを務めた。
(左から)ミサワホーム 企画管理本部 情報システム部長 宮本眞一氏、TOTO 情報企画本部 情報企画部 次長 渡邉智彦氏、アシックス 執行役員 グローバルIT統括部長 本間雄一氏
予定より1カ月早く終了
ゲストスピーカーの1人目は、アシックス執行役員 グローバルIT統括部長の本間雄一氏。2013年まではグループウェアに「Lotus Notes」を採用していたという同社だが、「グループウェアのコラボレーション機能を主に使っていたが、売り上げの海外比率が高まるにつれて世界中でコラボレーションする必要があり、限界を感じていたことから新しいツールの導入を検討した」とGoogle Appsに切り替えた理由を明かした。
ミサワホームは以前、グループ内の企業がそれぞれ独自にIT投資をしていたのをグループ全体を同じ基盤の上に載せたいという理由で2012年12月からGoogle Appsを採用。同社企画管理本部 情報システム部長の宮本眞一氏は「住宅メーカーなので現場と会社を行き来するため、どこででも仕事ができるという基盤を求めていた。その上、住宅メーカーというのは、センシティブな個人情報を保有しているため、セキュリティも非常に重要なテーマ。当時、コンシューマーITの台頭と言われる時期にあり、そういった観点からもGoogle Appsの導入を決めた」と語った。
水周りの住設機器メーカーであるTOTOは2009年からGoogle Appsを採用しているという。同社情報企画本部 情報企画部 次長の渡邉智彦氏は「当初はシンガポールだけに導入し、国内はMicrosoftのExchangeを使っていて、1時間に1回ぐらいはメールが止まってもいいという状況だったが、2013年ぐらいからはメールは水道やガスと同じインフラだから止めてはいけないということになった」と背景を説明した。
渡邉氏は「海外売上比率を全体の50%ぐらいまでに増やすことを目標にしていることもあり、グローバルに展開していくには基盤が必要となり、OSやブラウザがバージョンアップする度に対応しなければならない負担を最小にしたいということでGoogle Appsに切り替えた。当時メーカーで採用しているところはほとんどなく、他業界にヒアリングしてまわった結果、金融業で採用されているところがあり、それが大きな後押しになった」と経緯を説明した。
導入後の効果について、「世界25カ国で6~7カ月で導入する計画だったが、みなGoogleは使い慣れているということもあり、一気に広がり、予定より1カ月早く終了した。一番重宝しているのがHangoutで、いつでもどこでもコミュニケーションできるのが第一。Lotus Notesを使っていた時代は、メールボックスを300Mバイトまでに制御しなければならず、その管理が個人もシステム部門も大きな負担だった。Google Appsに変えて以来、ある程度放置しておけるので検索など各ユーザーが費やす時間を比較すると大きな差が出るのではないか。その時間を別の仕事に活かせる」とアシックスの本間氏。
ミサワホームの宮本氏は「情報システム部門から見ると、システムサーバを管理してパッチを当ててという作業がなくなったのはすごく大きい。更新作業から足が洗えたことで、インフラ周りよりもできるだけビジネスよりに部員の関心を持っていくことができた。ユーザー側から見ると、導入から4年が経過し、外出先でメールを見たり、カレンダーをチェックしたりという使い方は当たり前になってきた。以前であれば、仕事が止まっていたことが合間の時間でこなせるのはメリット」と語る。