また、経営面でも「国内市場が縮小し、住宅メーカーでも多角化を進めざるを得ない状況で、ここ数年M&Aが多く続いているが、新しくグループ入りした会社にすぐにシステムを開放でき、同じ基盤を提供しつつも個別の企業のサイトを開設するといった使い勝手のよさを感じる機会が増えた」と宮本氏は評価する。
3社の中では最も早くからGoogle Appsを導入しているTOTOの場合は、2014年9月から国内でも一斉にスタートさせたという。同社渡邉氏によると「イニシャルコストは格段に減った。ランニングコストについても、以前は6年間ぐらいで切り替えていかなければならなかったが、それを気にしなくなった」と効果を語る。
エンドユーザーの自発性に任せる
今後の利用計画と展望について、アシックスの本間氏は「“いつでもどこでもどのデバイスでも”を目的にGoogle Appsを導入したが、ある程度それは達成した。今後はさらにコラボレーションのレベルや質を高くするためにチームでの共同作業を増やしていきたい」とし、ストレージサービスの「Googleドライブ」を活用し、できるだけクライアント端末の中にデータを持たせないようにし、さらにドキュメントをウェブ上で可能な限り作成するなどクラウドで完結させるようにしていきたい意向を明かした。
ミサワホームも「Google Appsに変える前は、情報システム部門が一方的に新しい技術を強要するということが多かったが、以降はメール以外のメニューやサービスはいろいろと説明をしながらも使えるところは使ってくださいとエンドユーザーの自発性に任せてきた。結果、4年経つと各部門それぞれにいろいろな方法で活用するようになってきている」と宮本氏は解説した。
「Googleドライブもテレワークとか大上段に構えているのではなく、便利なのでみんな使い始めているという傾向がある。特に学生時代から無料で便利なITツールを使いこなしてきた若手社員からは歓迎された。できるだけルールでコンシューマーITを排除するのではなく、便利なものをセキュリティは担保しながらきちんとエンタープライズで使っていきたいというのが今後の展望」(宮本氏)
今後、グローバル展開を加速させていくというTOTOは「現地と日本の間のコミュニケーションをどんどん強化していく必要があるので、Google AppsのHangoutなどいろんなツールをトライしていかなければならない」と渡邉氏。
「これまで情報システム部門というのは、できることを取り入れようとすると、セキュリティに対する懸念から保守的な立場を取ることが多かったが、今回こうした基盤が手に入ったことで、ますます加速させていく取り組みをしていきたい。プランをしっかりつくってってから進めていくということより、とにかくやってみてすぐに修正していくというPDCAサイクルをスピーディーに回していくということにGoogle Appsを使っていけるのではないか」(渡邉氏)
最後にモデレーターの椎名氏は、進化論の提唱者ダーウィンの「生き残る種とは最強のものでもなく知性のあるものでもない。それは変化に対して一番対応できるものである」という言葉を紹介。この言葉をなぞらえ、「Google Appsはアップグレードは何も必要がなく、勝手に進化していき、コストも下がる。やらない手はない」とその有用性を強調し、セッションを締めくくった。