2016年4月に電力、2017年4月にガスの小売りが国内で自由化される運びとなり、これらに向けた新たなIT需要に対し、グローバルベンダーが持ち前の強みを発揮して積極的な攻勢をしかけている。その強みとは何か。国内のベンダーはどう対応すればよいのか。
日本オラクルが公益業界向けの取り組みを強化
日本オラクルが先頃、電力およびガスの小売り自由化を念頭に、公益業界向けの取り組みについて記者説明会を開いた。
この分野の担当役員でもある副社長執行役員クラウド・テクノロジー事業統括 三澤智光氏によると、同社では2013年4月に電力システム改革を包括的に支援する「電力システム改革推進室」を立ち上げ、電力会社のシステム改革に向けたコンサルティングや提案を積極的に行ってきた。
このたび、新たに電力・ガスシステム改革法案の閣議決定を受け、同組織を「電力・ガスシステム改革支援室」に改め、ガス会社や電力事業に新規参入する企業も含めて幅広く提案する体制を整えたという。

図1 公益業界向けのオラクル製品群(出典:日本オラクルの資料)
同社では、公益業界向けの製品群として図1にように必要な領域をカバーしており、さらにこれからの短期導入に向けた開発環境や新規参入業者向け包括ソリューションとしては「Oracle Cloud」によるサービスを有効活用できるとしている。
会見では、公益業界向けの顧客情報管理アプリケーションの最新版「Oracle Utilities Customer Care and Billing R2.5」の国内での提供開始も発表。三澤氏によると、同製品の現行版は日本でも大手公益事業者に採用されており、特に電力小売り自由化の流れを受けて、新料金メニューなどを短期間で設定できる柔軟性が高く評価されているという。なお、最新版では操作性を向上させるとともに、一部COBOLで実装されていた開発言語をすべてJavaに刷新したとしている。
SIerに求められる柔軟な発想と対応
電力・ガスのシステム改革という絶好のビジネスチャンスに対し、日本オラクルの積極的な攻勢ぶりが注目されるところだが、筆者が最も興味深かったのは、グローバルベンダーならではの強みだ。
それは何かというと、「電力・ガス自由化はすでに欧米で実施されており、地域によって異なった取り組みに対してオラクルはこれまでに確固たる実績を上げてきた。その経験やノウハウを生かして日本特有の要件にも対応したベストプラクティスを提案できるのが当社の最大の強みだ」(三澤氏)
図2に示したのが、オラクルがこれまでに手掛けた公益業界におけるグローバルでの実績である。三澤氏によると、「電力・ガス自由化の動きに伴い、グローバルでの事例やそれに基づく提案を直接聞かせてほしいというお客様のリクエストが非常に多い」と強い手応えを感じているようだ。

図2 グローバルでのオラクルの公益業界における実績(出典:日本オラクルの資料)
さらに顧客からは、それぞれにシステムインテグレーションを担っているSIerとうまく連携してカットオーバー後の安定稼働についてもしっかりと支援してほしいと強く要請されるという。
実は、同様の話を日本IBMやSAPジャパンでも聞いた。これらグローバルベンダーにとっては、まさしく「特需」ともいえそうだ。では、国内のベンダーはどう対応すればよいのか。それは顧客の要請にあるように、これらグローバルベンダーとうまく連携していくことが非常に重要になってくるだろう。
さらに、今後は小売りの自由化に向けて、最新のデジタルマーケティングを駆使するようなケースも出てくるかもしれない。SIerとして柔軟な発想と対応が一段と求められることになりそうだ。

会見に臨む日本オラクルの三澤智光副社長執行役員クラウド・テクノロジー事業統括(右)と田積まどか電力・ガスシステム改革支援室長