富士通研究所、富士通デザイン、富士通ソーシアルサイエンスラボラトリは、部屋全体をデジタル化するUI技術を開発し、この技術を活用した実証実験を開始した。今回開発したのは、プロジェクタ、カメラを組み合わせた装置を複数台設置し、壁、机などを1つのウィンドウシステムとして機能させる技術。
空間を、デジタル化したUIとして活用することが可能となり、「いわばWindowsにおけるデスクトップのように活用できるため、これまでは個々に実施されていた情報の共有や連携を自由に行える」(富士通研究所 ユビキタスシステム研究所 プロジェクトディレクター 沢崎直之氏)。
実証実験は、富士通デザインが開設している東京都港区アークヒルズ内の「HAB-YU platform」で、8月から2016年3月までの期間実施。一般の人も交えてのワークショップを実施し、この技術の評価、検証を進めていく。
今回の実証実験に活用されている新しい技術は次の3つ。
- 複数のプロジェクタを連携し、集まったスマート端末とすぐに連携し、簡単な設定で各表示デバイスを連結した場を構成。その場に集まったスマート端末のUIをすぐに場に転送して共有することを可能とする、場の機器群、スマート端末の連携技術。
- ユーザーが持つスマート端末の位置と、IDを特定するセンシング技術により、環境センサの情報とスマート端末内のセンサ情報をマッチング。環境センサーは正確な位置と人に動きがあることは分かるがIDは特定できない点、スマート端末センサはIDと人の動きは分かるものの位置がわからないという弱点をカバーする、端末の位置とIDのセンシング技術
- 大画面と人の動きが連動。手書きをベースとした文字やジェスチャによる直感的なUIによる、直感的な情報共有、操作を実現するUI技術。情報共有のベースとなっているサーバは、2014年12月、富士通ソーシアルサイエンスラボラトリが発売した、共創支援&学習支援ツール「Webコア Innovation Suite」。
今回、実証実験が行われている室内には、黒い箱の中にサーバを置き、Webコアを活用して壁面に照射するプロジェクタが3台、テーブルに照射するプロジェクタが1台、スマホを持った人の足下など床に照射するプロジェクタを2台設置している。壁面、テーブルなど空間を自由に活用し、赤外線光で入力するペンを使って文字入力などを実施できる。
さらに、参加者が持っているスマートフォンを、参加者のIDを認識した上で情報共有、共創のためのツールとして活用できる。
実証実験では「実用のためには、設置、画面設定が簡単に、誰でも行うことができるものになる必要がある。それが可能か。何台のスマート端末を連携できるのか、といったことを社内スタッフ、さらに一般の方にも入ってもらって進めていく」(沢崎氏)計画だ。
現段階では利用できるアプリケーションはWebコアベースに開発されたものだが、「一般的なウェブアプリ開発と同じ感覚で開発できる」という。
また、利用しているハードウェアは一般的なものばかりで、「持ち運びが可能となる、小さなセット化ができないのかも検討していく」という。