Symantecは2014年10月に企業分割を発表。2015年10月から手続きが始まり、2016年1月からは情報セキュリティ事業のSymantecとデータ保護ソフトウェアなどで構成される情報管理事業を担うVeritas Technologiesに分かれて事業を展開する(Veritasが投資会社Carlyleに売却されることも発表されている)。企業分割を踏まえて、7月にVeritasは既存製品を強化するととともに今後の新製品を発表している。
戦略と製品を明確に
Symantecは2004年12月にVeritas Softwareの買収を発表し、2005年に買収を完了した。買収後もSymantecは長い間、Veritasのブランドで製品を提供していた。ストレージ管理ソフトウェア「Storage Foundation」の名称からVeritasが消えたのは2014年1月。つい最近までVeritasというブランド名の影響力を無視することはできなかった。
現在、Veritas事業でアジア太平洋と日本を担当するプレジデントのChris Lin氏は、Veritasというブランドについて「よく知られており、市場の中で重要なポジションにある」との見方を示した。Lin氏は、買収されてからの10年について「統合できる部分もあったが、大部分は別路線」と説明。会社を分割することの意味についてはこう語った。

Veritas Technologie アジア太平洋日本担当プレジデント Chris Lin氏
「セキュリティと情報管理はともに市場は活況を呈しているが、多様化が進んでいる。ユーザー企業のニーズも変わってきており、明確なアプローチが必要になっている。よりよく対処するには分社化が必要と2014年夏に決定した」
事業分割については「社内やパートナー企業、ユーザー企業からいい反応をもらえた。分社化後の戦略と製品を明確にしている」(Lin氏)という。
情報管理が困難な時代
改めて「ビッグデータ」という言葉で説明する必要はないように、データは爆発的な増加を続けている。世界全体でデータが流通する総量は、今後5年間で現在の10倍となる44ゼタバイトに達すると予測されるほどの勢いだ。
データが増加するということは、それだけコンピュータで分析できる事象が増えるということだ。だが、増加の一途を辿るデータを保存、管理するのはますます厳しい業務になりつつある。データが増えるからといって、担当者が増えるわけではないし、IT予算が増えるわけでもない。少ない人員でデータ管理業務を回すとともにコスト効率を高める必要がある。
Lin氏は、こうした現況を「情報管理が困難な時代にある」と表現する。コンピュータで分析できるデータが多く存在することは正しいことのように思われる。だが、実際にはデータの69%は不必要なものであり、実際に価値があるデータは31%でしかないという調査結果が示されている。別の調査では、企業内に存在する1ペタバイトを保持するのに年間400万~500万ドルが必要とされている。もちろん、データを保持するためのインフラを維持するコストもバカにならない。
「企業内にあるデータの70%は2年間誰もアクセスしていない。そのうちの30%が削除してもいいデータだったとされている。企業内に存在するデータが必要か不必要かを見極めることが求められるようになっている」(Lin氏)
企業ITでは、ハードディスクやフラッシュメモリなどのハードウェアの価格が下がり続けていることから、蓄積するデータの中味を見極めることなく、とにかく保存できるようになっている。デバックアップもひたすら取り続けられるようにもなっている。
データの増加にあわせて、インフラを増大させてきたという、ある企業は「管理しきれないほどのインフラとなり、どうしていけばいいのか分からないという課題を抱えて、コンサルティングを求めることがあった。現在はデータと情報を保管することに対する知見が必要とされている」(Lin氏)
可用性と洞察が柱
ビッグデータという言葉から派生して、データを競争力の源泉に据えようとする“データドリブン”という言葉が聞かれるようになっているが、企業のデータへの依存度が今後高まることが容易に想像できる。そうした現在の状況を踏まえて、Veritasでは製品のポートフォリオとして「インフォメーションアベイラビリティ」と「インフォメーションインサイト」を柱にすることを打ち出している。
インフォメーションアベイラビリティとは「必要な情報を必要な時に、保存されている場所に関係なく活用できる」ことを目指している。もう一つのインフォメーションインサイトは「保存している情報がどんなものであるかを把握、管理できるようにする」ことを狙っている。
「企業がデータを保持するのは、データから意味のある情報を引き出すため。データというレベルではなく、情報というレベルで管理することが求められている」(Lin氏)