デジタル未来からの手紙

2025年から2045年の世界と情報システム部門の役割 - (page 3)

林 雅之

2015-09-10 07:00

2045年は、人工知能が人類の能力を超える?

 2030年からさらに超えて2045年の世界をみてみよう。

 発明家・未来学者のRay Kurzweil氏氏は、2045年には、コンピュータの能力が全人類の知能を上回る「技術的特異点(シンギュラリティ)」に達することで、人間社会に大きな変化をもたらし、人間の想像力ではとらえることができない、未来社会が到来すると予測している。

 2045年に、全人類の能力を超える説には、賛否両論があるが、少なくとも、この30年間は、人工知能に関連するテクノロジーは、大幅な進化を遂げるのは間違いない。

 すでに、計算能力は、スーパーコンピュータのように、人間の能力をはるかに超える処理能力を持つようになっている。人間にしかできない知性や常識、経験、判断などのさまざまな能力をどのように追いつき超えることができるのかが、大きなテーマとなるだろう。

 Kurzweil氏によると、2045年には、人間の脳内に、血液細胞と同じくらいのコンピュータチップを埋め込み、クラウドをつなぐことで、人間の思考を拡張でき、さらには、脳内のコンピュータチップを経由して、クラウドに脳のバックアップもできるようになるという。

 これは、遠い未来の話ではなく、Googleは特許を登録して準備を進めている。

 グーグルは、2012年4月にMethods and systems for robot personality development「ロボットのパーソナリティを構築する方法とシステム」の特許を出願し、この3月に登録している。


(出所:Google Methods and systems for robot personality development)

 人間のさまざまな特徴に基づいた性格データを蓄積するデータベースやデータを配信するクラウドをベースとしたシステムを構築し、インターネットなどを介してロボットやモバイルデバイスが性格データを受信し、性格を再現できるという。

 つまり、性格データをクラウドからダウンロードし、性格データをロボットにとりいれることによって、たとえば、芸能人や亡くなった親族の性格や話し方や表情を似せたロボットができるということになる。

 カーツワイル氏は、シンギュラリティにより、人間を超える人工知能を持つロボットが、自身のプログラムをさらに高度なものに書き換え、地球を支配する存在となると予測する。

 これまで、生物進化の頂点にたっていたホモ・サピエンスである人間は、自分の性格のすべてのデータをクラウドに格納するマインドアップローディングを行い、人間そのものは肉体を失い、クラウドの中で意識だけを持つ存在になる可能性があると、警告している。

 人工知能脅威論を唱える経営者や科学者などの識者も多い。

 テスラ・モーターズの最高経営責任者(CEO)のElon Musk氏は、

 :人工知能は核兵器よりも危険である

 とTwitterでコメントをするとともに、人工知能を人類にとって安全で役立つ研究を行う組織には1000万ドルの寄付をしている。

 天才物理学者のStephen Hawking博士は、2014年のBBCのインタビューで

 完全なる人工知能の開発は人類の終焉をもたらす可能性がある

 と警鐘を鳴らし、2015年5月にロンドンで開催されたカンファレンス「Zeitgeist 2015」では、

 100年以内に人工知能は人間をコントロールするようになる

 という予測をしている。

 Hawking氏とMusk氏の両氏は2015年1月に、「Research priorities for robust and beneficial artificial intelligence(堅牢で有益な人工知能のための研究の優先順位)」というタイトルの公開意見書を発表している。公開意見書では、人工知能の研究に反対する立場ではなく、人工知能の研究において、人間が望むことを行い、人間のコントロールのもとにあることを保証されている状態におくべきとし、人工知能研究のあるべき方向性を示している。

 一方、Google会長のEric Schmidt氏は、

 優れた人工知能を持つロボットは、人類にユートピアをもたらす。ディストピア(暗黒社会)ではない

 と真っ向から反論を唱えているように、賛否両論があるのが現状だ。

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