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セブン&アイCIOが語る情報戦略――ビッグデータより人のデータ

末岡洋子

2015-11-12 07:00

 情報と技術をどう活用するか、IT戦略が企業の業績を大きく左右する。最高情報責任者(CIO)の手腕として技術トレンドを適切に、どこに何をどのように取り込むかが問われており、その役職はこれまで以上に重視されている。

 日本には強いCIOがいないといわれるが、Oracleが10月に開催した「Oracle Open World 2015」で6人の優れたCIOを選ぶ「CIOオブ・ザ・イヤー」にセブン&アイ・ホールディングスの鈴木康弘氏が選ばれた。現地で鈴木氏が、11月1日に正式オープンした「omni7」を中心に話をした。

ウェブルーミングで店舗に若い客が増えた


セブン&アイ・ホールディングス 取締役執行役員 最高情報責任者(CIO)の鈴木康弘氏。
「新しい技術から生まれる可能性のあるビジネスモデルを提案し、それを形にしていくのがCIOの役割だと思っている」と語る。

 今回の受賞は、鈴木氏が数年がかりで温めてきたオムニチャネル戦略が評価されてのことだ。その要となるomni7は10月にプレオープンしており、鈴木氏らはすでに確固とした感触を得ているようだ。

 「思った以上の手応えを感じている。当初の目論見以上に成果が出ている」と鈴木氏。ネットで商品をチェックし店舗で買う”ウェブルーミング”が予想以上に多いという。「店舗で買った人の約35%がネットを見てからお店に来ている」「(傘下の)イトーヨーカドー、そごう西武などは10月、客数が前年比140%ぐらいで伸びている」と明かす。

 プレオープンと同じタイミングで開始した新ファッションライン「Jean Paul GAULTIER for SEPT PREMIERES」も大きく寄与している。omni7のサイトで商品を確認して店舗に来た女性客が、洋服を試着して買うついでに雑貨も手に取るといった具合だ。

 スタート前の予想では、ウェブルーミングは10~20%と見ていたが、ふたを開けてみるとスタート当初は4割、現在でも平均して3割あるとする。なお、セブン&アイ・ホールディングス(HD)はJean Paul GAULTIER for SEPT PREMIERESについて、発売後3週間で販売計画比150%の売り上げを達成したことを報告している。

 単に店舗に客が増えただけではない。ネットで商品をチェックする客は若い世代が多い。つまり、ウェブルーミングの中心は若い世代であり、これは課題の1つだった百貨店やスーパーの高齢化に多少の変化をもたらしたようだ。

タブレットを店内外で

 omni7の正式オープン時、Jean Paul GAULTIER for SEPT PREMIERESの商品を拡充する。今後は、同社の最大の特徴であるさまざまな子会社やサービス業を持つという点を最大限に活用していく。セブン&アイHDは上記のイトーヨーカドー、そごう・西武などに加えて、赤ちゃん本舗、ロフト、セブン銀行などを傘下に収めるが、中心となるのは全国に1万8000店舗を展開するセブン-イレブンだ。

 「購入したものをセブン-イレブンでピックアップできるのがわれわれの最大の特徴」と鈴木氏。返品もセブン-イレブンで受け付けるが、食料品など一部を除くと原則的に無料だ。これは、「売ったものには必ず責任を持つ」という同社の方針があるからだ。

 omni7に参加したいという他社からの誘いもあるというが、単純に取り扱い商品やブランドを増やすということは考えていないようだ。「楽天さんのようにモールをやるつもりはない」と鈴木氏は違いを明確にする。

 omni7の拡大戦略の一つとして、鈴木氏はタブレットの活用も明かした。

 「ネットがもてはやされるが、日本は高齢化社会。70代、80代の人がスマートフォンで注文することはあまりないだろう」。そこで、セブン-イレブンにタブレットを置き、そこから注文できるようにする。店内だけではない。お弁当を届ける既存のサービスと連動して、宅配時にタブレットを持参してその場で注文を聞くことも行う。なかなか店に行けないお年寄りなどが、店員のタブレットを通じてネットにつながる。

 「ネットは使えないが、ネットで売っているものは買いたい。そこのニーズをオムニチャネルで汲み取っていく」と鈴木氏は説明する。すでに一部で実験しており、11月にスタートする予定だ。

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