松岡功の一言もの申す

セールスフォースが業種別ソリューションに注力する理由

松岡功 2015年11月12日 11時30分

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 セールスフォース・ドットコムが業種別ソリューション推進の強化に向け、新たなパートナーシッププログラムをスタートさせた。その狙いについて筆者なりに探ってみたい。

セールスフォースが新たなパートナー施策を展開

 「企業のITプラットフォームは今後、従来のように業務の効率化を図るだけでなく、顧客との接点を強化してビジネスを拡大していく役割が一層求められるようになる」

 米Salesforce.comの業種別ソリューション事業担当エグゼクティブバイスプレジデントであるJohn Wookey氏は、日本法人のセールスフォース・ドットコムが先頃開いた業種別ソリューション推進のための新たなパートナーシッププログラム「Salesforce Fullforce」の国内提供開始の発表会見でこう語った。


記者会見に臨む米Salesforce.com業種別ソリューション事業担当エグゼクティブバイスプレジデントのJohn Wookey氏(右)とセールスフォース・ドットコム執行役員アライアンス本部 副本部長の手島主税氏

 同氏はさらに、「これからはあらゆる企業において、顧客との接点を強化したITプラットフォームによって経営変革を進めていく必要がある。当社はそうした企業の取り組みを、各業種に精通したパートナーとともに強力に支援していきたい」と強調した。

 また、Wookey氏に続いて説明に立ったセールスフォース・ドットコム執行役員アライアンス本部 副本部長の手島主税氏はSalesforce Fullforceについて、「当社はこれまでも多くのパートナーとの協業によって多数の業種別アプリケーションをAppExchangeという仕組みのもとで提供してきたが、新たなプログラムでは各業種に精通したパートナーとともに、特にエンタープライズクラスの企業が経営変革を進めるために必要な業種別ソリューションを、コンサルティングをはじめとしたプロフェショナルサービスも合わせて提供していく」と語った。

 Salesforce Fullforceの詳しい内容や、今回第一弾として新プログラムのパートナーとなったコンサルティング各社の業種別ソリューションについては関連記事を参照いただくとして、ここではセールスフォースがこうした新施策を進める狙いについて、筆者なりに探ってみたい。

新施策はSAPとオラクルの“牙城”を切り崩すか

 ちなみにSalesforce Fullforceは、グローバルでは2年ほど前から展開しており、すでに43種の業種別ソリューションが整備されているという。したがって、同社のグローバルでの施策としてとらえて考えてみたい。

 新たなプログラムの狙いは、Wookey氏および手島氏が語ったように、顧客との接点を強化したITプラットフォームによって経営変革を進める企業に対し、セールスフォースのクラウドプラットフォームとパートナーの業種別ソリューションによって支援することにある。とりわけエンタープライズクラスの企業を対象に、コンサルティングも含めた業種別のきめ細かいソリューションによって「経営変革の支援」まで踏み込んでいるのが最大のポイントだ。

 セールスフォースのパートナーエコシステムという観点でみれば、これまでは業種別アプリケーションの品そろえによる「水平拡大」が中心だったが、新プログラムでは特にエンタープライズクラスの企業を対象に「垂直深耕」も積極的に進めていこうという思惑があるのは間違いない。

 こうした取り組みを、セールスフォースの競合状況と照らし合わせてみると興味深い。同社にとって業種別ソリューション分野で競合相手となるのは、オンプレミス環境ですでに巨大な顧客ベースを持つSAPとOracleだ。しかも両社ともエンタープライズクラスの企業から確固たる支持を得ている。

 この両社が今最も力を入れているのが、オンプレミス環境での巨大な顧客ベースをそれぞれ自社のクラウド環境へ移行させることだ。ここしばらくは両社ともその「大移行期」が続く。システム更新時期を迎えた顧客を他社に奪われることなく、自社のクラウドやハイブリッド環境へ導くかが課題となっている。

 セールスフォースにとっては、この大移行期こそ、リプレースのビッグチャンスといえる。しかも、もともとCRMをベースとしてきた同社にとっては、顧客との接点を強化したITプラットフォームが求められている状況はまさしく“追い風”となる。

 そう考えると、セールスフォースの新プログラムはSAPおよびオラクルのエンタープライズ向け業種別ソリューションの“牙城”を切り崩すための施策とも見て取れる。

 果たしてSalesforce Fullforceの取り組みがどこまで広がるか。その状況次第で、セールスフォース、SAP、オラクルの三つ巴の戦いによるエンタープライズ市場の勢力図が塗り変わる可能性もありそうだ。

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