未来へのマイルストーン--2015年のAI、ロボット、IoT関連政策を振り返る - (page 4)

林 雅之

2015-12-31 08:23

2020年に実用化を目指す自動走行車の普及に向けた政府の取り組み

 自動走行車の普及に向けて、政府も取り組みを進めている。政府のIT総合戦略本部は6月、2014年に策定した官民ITS構想・ロードマップを改定した「官民ITS構想・ロードマップ2015」を公表し、国家ITS戦略を推進するための戦略が示されている。

 2020年には、東京五輪・パラリンピックでは、東京において準自動走行システム(レベル3)を先がけて実用化、2020年代前半には、加速や操舵、制動をすべて自動車が行い、緊急時のみドライバーが対応する状態(レベル3)の準自動走行システムを市場化、2020年代後半以降では、完全自動走行システム(レベル4)の市場化を目指している。


官民ITS構想・ロードマップ2015 2015.6

 本構想・ロードマップでは、重点的に開発を目指す自動走行システムにおいては、以下の3つの検討を進めている。

  1. グローバル市場での国際競争強化に資する自動走行車
  2. 自動走行機能付き地域公共交通システム
  3. 地域コミュニティ向け小型自動走行システム

 自動走行機能付き地域公共交通システムでは、自動走行技術により定時性・快適性を確保したバスシステム(ART)の都市部での導入を念頭に、東京オリンピック・パラリンピックでは一部実用化を目指している。

 地域コミュニティ向け小型自動走行システムでは、過疎地域などで高齢者などが交通の手段を確保できない場合において、地域のコミュニティ内を気軽に移動できる低速・小型自動走行システムを導入するとしている。

 経済産業省と国土交通省は、従来の自動車技術以上の技術が必要な自動走行において、業界の枠を超えた連携を進めていくために、「自動走行ビジネス検討会」を2月に設置。6月には、その検討結果の中間とりまとめを公表した。

 この中間とりまとめでは、自動走行システムの導入に伴い、交通システム全体での協調など新たな付加価値領域が創出され、国内自動車メーカーや部品メーカーがそれぞれどのようなポジションを目指し、競争力を維持していくかが重要な論点と位置付けている。

 自律走行システムのさらなる活用では、ドライバー不足の解消やCO2排出量削減に向けた高速道路などでの隊列走行、幹線道路から家庭まで伸びる最後の支線ワンマイルを自動走行するラストワンマイル自動走行、自動駐車などの活用の検討が進められている。


自動走行の具体的な価値やアプリ 出所:自動走行ビジネス検討会 中間とりまとめ報告書 2015.6

 自動走行車の普及にあたって、同じ車線内で自動と手動の車両が共存する状況を想定し、道路交通法を自動走行車向けに改定するといったように、法整備を含めた環境整備をする必要性が指摘されている。

 日本では国土交通省が、高速道路にかぎり自動走行を段階的に認める方向で検討中しているが、一般公道での利用には時間を要することが予想される。

 自動走行の国際ルールの策定に向けた取り組みも進められている。2014年11月に国連欧州経済委員会(UNECE)の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)において、自動運転分科会を設置し、日本とイギリスが共同議長に就任し、運転者がいることを前提としたドライバー支援型自動運転と、運転者が不要な完全自動運転などの国際ルールの策定に着手している。

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