シェアリングエコノミーをどう解釈するか
(ノークリサーチ提供)
IT活用との関連で今後注目される動きの一つが、「シェアリングエコノミー」である。非常に広い概念で、関係するビジネスの規模や業種も多岐に渡るため、中堅中小企業にとっても新たなビジネスに取り組む契機となる可能性がある。
上のグラフでは「2015年10月以降に前四半期と比べてIT投資額を増やす」と回答した年商500億円未満の中堅中小企業に対してIT投資増加の理由を尋ねた結果のうち、新規のIT投資に関連する代表的な項目をプロットした。
「製品/サービスの開発」「販路の創出や拡大」と並んで「業態の拡大や転換」が挙げられていることがわかる。そのため、業態の拡大や転換につながる可能性のあるシェアリングエコノミーの動向は、ITソリューションを提供する側にとっても重要なトピックと指摘した。
例えば「民泊」では、日本においては旅館業法により禁じられているため一部の地域で条例として限られた条件でのみ認められるという状況にとどまり、体験型宿泊施設を提供する「体験民宿」が注目されている。
体験民宿は規制緩和も進みつつあり、例えばIターンやUターンで地方に移った若者などが体験型宿泊施設を開業することも容易となっており、若者が持つ新たな発想を活かした需要喚起も期待できる。また、それらをサポートするウェブサイトや予約サービスといったIT基盤提供はITサービスを提供する側としても検討に値すると評価した。
また、「ライドシェア」も同じく日本国内では道路運送法に抵触するためサービスを提供できない。タクシーが余剰気味な都市部でなく、むしろ過疎地における移動手段や物流手段の確保として「貨客混載」が注目されている。
現状では貨物と旅客の運送はそれぞれ別の法律で定められているのに対し、「タクシーが郵便物や宅配便を運ぶ」、あるいは逆に「運送業者が配送ルートを回る際に旅客を載せる」といった混在を認めるという内容が国土交通省の有識者会議などで検討されている。これが実現されれば、過疎地における移動や物流が改善され、ビジネス領域が広がることで全国各地の中小運輸業におけるIT活用も進む可能性があるという。
このように「シェアリングエコノミー」による業態の拡大/転換とそれに伴うIT投資の活性化を考える上では業種や地域の特性、各種の規制緩和といった総合的な視点を持つことが重要となってくると説明する。
建設業における現場撮影のように「区域を限定したドローン活用」の動向にも注目すべき
(ノークリサーチ提供)
2015年に多くの注目を集めた新たなツールの一つ「ドローン」については、落下事故やプライバシー侵害を懸念する声もあり、企業におけるIT投資との関連性については他の項目と比べると実感しづらい可能性を指摘する。一方、ドローン活用は企業のビジネスシーンに少しずつ影響を与えつつあるという。
宅配サービスなど日常生活に密着したドローン活用はさまざまな可能性を秘めているが、地理的な広さや取り扱う物流量の多さなどから運用の主体は資本力のある大企業に限られると予想される。これに対し、「区域を限定したドローン活用」に目を向けると、中堅中小企業におけるIT活用との関連性が見えてくる。
建設現場における進捗記録を目的としたドローンによる写真撮影はその代表例だ。当面は人口集中地域ではない建設現場での利用となるが、建設現場における業務効率改善に寄与するものとして期待される。実際、建設現場をドローンを用いて空撮して3次元データを生成するサービスを提供する米SkyCatchにコマツが出資するなど、関連する大手企業による動きも活発となってきており、こうしたドローン活用の動きが中堅中小の建設業にも波及する可能は十分あるとした。
上のグラフでは年商500億円未満の中堅中小の建設業および小売業に対して、「導入済みまたは導入を予定/検討しているスマートデバイス端末の活用法」をたずねた結果のうち、回答割合が特に高かった項目をそれぞれプロットした。
導入事例も数多い、小売業における「タブレットをPOSレジ端末の代替として利用する」という活用法に比べても、建設業における「スマートフォンで現場の写真/位置情報/報告事項などをまとめて事務所へ送信する」という活用法を望む割合はさらに高い。
つまり中堅中小の建設業では建設現場の業務効率改善を実現する新しいツールの活用意欲が高いと考えられるという。導入コストがそれほどかからない一方で高い効果が期待できるという点ではスマートフォンとドローンは共通しており、上記に述べたドローン活用が中堅中小の建設業にも波及する可能性は十分あると考えられるという。さらに、ドローン活用によって収集できるデータが増えれば、それを管理/活用する業務システムにも新たなニーズが生じてくる。
IT製品やサービスを提供する側としては特定業種における「区域を限定したドローン活用」のアイデアがどこまで広がっていくかに注視するべきとした。