繰り返しATMに言及してきたのには、理由がある。それは、ATMが現在果たしている、金融機関と預金の間の接点としての重要性である。
金融広報中央委員会が公表している調査結果によれば、取引金融機関が選ばれるもっとも主要な理由は「近所に店舗やATMがあるから」であり、2015年度調査でも78.5%がその旨を回答している(次点は経営の健全性で29.8%)。現金社会でもある日本現状の日本では、これはある種当たり前の結論である。しかし、いずれATMを利用する頻度が極端に下がるライフスタイルを見据える中では、金融機関の選択基準も大きく変わってくるものと考えられる。
その際に、銀行と預金者をつなぐこととなる接点は何なのだろうか。その方向性としては、アプリや第三者の提供する何らかのサービスが起点になるものと考えられ、その有用性を高めていくためには、前述のAPIの活用によるオープンイノベーションが大きな価値を持っていくものと考えられる。
もう1点、重要な観点として決済のシームレス化がある。
これは、ECサイトなどが既に実現している、クレジットカードなどの決済手段を、買い物などの行為が発生する事前に登録しておくことである。これは購入の意思決定と、実際の支払取引のラグを限りなくゼロに近くすることにつながるため、現在多くのサービスにおいて、決済と実際のインターネット上の取引を一律提供する動きが見られている。身近な例では、タクシーの呼び出しアプリなどにおいて事前にクレジットカードの登録を行うことで、降車時にはレシートが渡されるだけ、といった時間短縮の利便性を提供している。