本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、大塚商会の大塚裕司 代表取締役社長と、パシフィックビジネスコンサルティングの小林敏樹 代表取締役社長の発言を紹介する。
「私たちが売りたいものを売るのではなく、顧客に喜ばれる提案をせよ」 (大塚商会 大塚裕司 代表取締役社長)
大塚商会の大塚裕司 代表取締役社長
大塚商会が先ごろ、2015年度(2015年1~12月)の決算を発表した。大塚氏の冒頭の発言は、その発表会見で、「2015年度は業績推移として結果的に“踊り場”になった」ことを踏まえ、「本来の営業姿勢をあらためて徹底する」との思いで“原点回帰”を誓ったものである。
同社の2015年度の連結業績は、前年度比で売上高が0.5%増、営業利益が0.6%増、経常利益が0.3%増、当期純利益が1.1%増と、いずれも微増ながら6期連続の増収増益を達成した。微増にとどまったのは、前年度の業績がWindows XPのサポート終了に伴うPCの買い換え需要や消費税増税前の駆け込み需要で大幅に伸長したため、その反動があったからだ。
大塚氏はこの結果について、「2015年度は前年度の特需の反動を受けた形でマイナス基調の出だしだったが、後半に追い込んで何とか増収増益にこぎ着けることができた。ただ、これまでの業績の推移からみると踊り場を迎えた形になったので、2016年度はあらためてしっかりとした成長軌道を描けるようにまい進したい」と語った。
「増収増益にこぎ着けたことは嬉しく思っている」と言う大塚氏だが、筆者からみると、よくぞ後半に追い込んで増収増益にこぎ着けたものだと感心しきりである。同社の営業力の強さをあらためて見せつけられた感が強い。
2016年度の連結業績は、前年度比で売上高4.9%増、営業利益7.2%増、経常利益5.9%増、当期純利益6.2%増を見込んでいる。これを達成するため、「生産性向上や省力化に向けたソリューション提案」「顧客との取引品目の拡大やクロスセルの展開」「タブレットを中心としたクライアント活用の提案」「光回線やネットワークソリューションの強化」「顧客のマイナンバーや軽減税率への対応の支援」といった施策に注力していく構えだ。
大塚商会の業績推移(出典:大塚商会の資料)
こうした施策の中でも、大塚氏が最も重要なキーワードとして挙げたのが「ソリューション提案」だ。冒頭の発言は、それを営業姿勢へのメッセージとして述べたものである。実はこのメッセージには、従来の大塚商会の営業姿勢における課題を解消したいという大塚氏の強い意欲が見て取れる。