自らを観察して学ぶグーグルのロボット--いかにして物をつかむようになる?

Liam Tung (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2016-03-15 06:45

 Googleのロボットアームは、平らな表面に置かれた物であれば、それがどのような形をしていても82%の確率でつかむことができる。

 人間にとって、物をつかむという動作は子どもでも簡単にできる。生まれたばかりの赤ん坊であっても、手の平に触れた指を反射的に握る。その能力は時とともに、そして視力の助けを借りて成長し、最終的にはさまざまな物を、その形にあわせて的確につかめるようになる。

 Googleは現在、機械学習技術を活用し、人間が手と目を連携させて物をつかむ際のフィードバック過程を模倣することで、複数のロボットアームに日用品をつかむ動作を教え込もうとしている。

 人間は、テニスのサーブや、皿洗いといった動作における微妙な筋肉の動きを、こういったフィードバック過程を経て実現しているのだ。

 Googleによると、このフィードバック機構を実現した結果、ロボットアームは物をつかむ際に「自らのグリッパー(指に相当するパーツ)を観察」し、自身の動作を補正できるようになっているという。

 Googleの科学者であるSergey Levine氏によって率いられた研究チームによると、現代のロボットアームは一般的に、状況を観察し、モデルを作成し、計画を立案し、実行するようになっているが、この手法では現実世界の複雑な環境には対応できないという。

 そこでGoogleの研究者らは、より人間に近いフィードバック機構を実現するために、アームの部分にカメラを装備した14台のロボットアームを用意した。それぞれのロボットアームは、自らの失敗事例や成功事例を他のロボットアームと共有するようになっている。

 ロボットアームの培った「経験」はその後、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いたフィードバックシステムを訓練するために用いられる。CNNは最近脚光を浴びている機械学習の一分野だ。

 日々培った経験をCNNに与えていくことで、ロボットアームはつかむという動作が成功する確率を、カメラの映像やグリッパーの動きに基づいてより正確に判断できるようになる。また、成功する可能性を最大限に高めるための調整も行えるようになる。

 訓練は2カ月以上にわたり、80万回以上におよぶ試行によって訓練データが収集された。

 Google ResearchのLevine氏は主な成果の1つとして、ロボットの動きを最適化するためのプログラミングが不要であった点を挙げている。

 「その成果は継続的なフィードバックだ。これは手と目の連携(hand-eye coordination)とも呼べるだろう」(Levine氏)

 また同氏は「ロボットは自らのグリッパーの動きを観察し、リアルタイムで動きを補正する。また興味深いことに、重なり合った物体から1つの対象物を特定するために行う、事前動作も見せるようになった。こういった振る舞いはすべて、プログラムとしてシステムに指示しておいたものではなく、学習過程で自然に生み出されたものだ」とも述べている。

 Googleは今回のアプローチの効果を検証するために、リアルタイムでの動きの補正を行わない開ループ制御での実験も行った。その結果、失敗の比率は34%となり、今回のアプローチで達成できた18%の失敗率との間に大きな差があることを確認できた。

 また同社の研究報告書によると、今回の学習環境とは異なる、平らでない表面や狭い空間に置かれている物体をつかむことは難しいという。

 しかし研究者らは、ロボットアームが固い物体と柔らかい物体で異なったつかみ方をする傾向を見せている点に満足している。ロボットアームは、固い物体に対してはつかむという動作を見せた一方で、紙状の薄い物体やスポンジに対してはつまむという動作を見せていたという。

Googleは、ロボットアームの研究に機械学習技術を活用し、人間が手と目を連携させて物をつかむ際のフィードバック過程を模倣して、動きを人間に近づけようとしている

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    セキュリティ担当者に贈る、従業員のリテラシーが測れる「情報セキュリティ理解度チェックテスト」

  2. セキュリティ

    サイバー攻撃の“大規模感染”、調査でみえた2024年の脅威動向と課題解決策

  3. セキュリティ

    従業員のセキュリティ教育の成功に役立つ「従業員教育ToDoリスト」10ステップ

  4. セキュリティ

    IoTデバイスや重要インフラを標的としたサイバー攻撃が増加、2023年下半期グローバル脅威レポート

  5. セキュリティ

    急増する工場システムへのサイバー攻撃、現場の課題を解消し実効性あるOTセキュリティを実現するには

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]