Do(実行):サポートの優先順位を決め、迅速に実行
予報通り、Sandyはニューヨーク州とニュージャージー州を襲った。Sandyによって自社オフィスが浸水し、電力供給がストップしたとわかった時点で、eMazzantiは、浸水被害がなく電力が供給されている場所にある従業員の自宅を仮オフィスとしてセットアップする決断を下し、まず自社システムの復旧のめどを立てた。
そして、電話回線が不通になっていたため、従業員の携帯電話を使用して顧客への連絡を開始し、顧客がどのようなサポートを必要としており、どのように助けられるかを把握。負傷者救護の優先順位を決める“トリアージ”と同様の方法で、サポートの順番を決めた。
その際、ハードウェアが損傷してしまった会社には、新しくサーバを調達し、またそれをどこに設置するのか、オンプレミスにするのか、仮想環境にするのかといったことを検討しなければならなかった。そして、サーバなどを運び込み、顧客がビジネスを再開できるように設置、インストールをする必要があった。
ある顧客の場合は、高層階にあるオフィスにサーバを置いていたが、停電によってエレベーターが稼働していなかったため、階段を上ってサーバを物理的に運び出し、そしてそのサーバを、数ブロック先のビルの14階にあるデータセンターまで運び込まなければならなかった。また、ハードウェアの損傷を受けた顧客が新しいハードウェアの到着を待つまでの間、別の顧客に、その顧客のために一時的に機器と電源の供給を依頼するということもあったという。
eMazzantiでは、自社とその運用を担っていた顧客のシステムすべてにシステムバックアップを取得し保管していた。ハードウェアが無事稼働している顧客には、バックアップファイルをリカバリするだけで良く、また、新しくハードウェアを調達しなければならない顧客には、仮想環境を利用して、システムを暫定的に稼働させることができた。
遠隔作業で迅速にサーバを復旧させられるシステムを採用していたことも幸いし、これにより、72時間以内にすべての顧客への連絡を完了し、さらに、すべての顧客のデータ復旧を完了させることができた。
TechRepublic Japan関連記事:ハイブリッドクラウド座談会
(1)企業ITの行き先を徹底討論する
(2)エンタープライズ×AWSをさまざまな視点で議論
(3)SDNやDockerは何を変えるのか
(4)アーキテクチャを理解しておく必要がある
(5)IT部門に求められるスキルが変化している
Check(評価):適切な対策が生んだ新たな顧客
結果として、eMazzantiが管理する顧客のデータ損失はゼロ%となり、同社はSandyの被災後も顧客を100%保持することに成功した。
しかし、それだけではなく、その後短期間で顧客が50%も増えた。理由は、災害耐性の強さが評判を生んだだけでなく、競合他社が顧客のデータ復旧を完了させることができず、ビジネスを廃業まで追いやられてしまったからだ。
Action(改善):現状に満足をしないで、対策をブラッシュアップ
eMazzantiはこの時の対応に満足することなく、ここで得た経験を踏まえて対応を見直した。それを実践に移すことになったのは、その1年後だった。
冬の嵐「Nemo」。2013年2月に米国東部を襲った大寒波だ。コネチカット州、ニューハンプシャー州、マサチューセッツ州、メイン州、ニューヨーク州では、75センチ以上の積雪を記録。18人の死者を出し、北東部の約70万世帯と事業所が停電となった。
eMazzantiはこの大寒波の到来にあたって、事前に同社がどのようなサポートを提供可能であるかを顧客に知らせるため、注意喚起のメールを顧客に送信した。社内ではシステムバックアップの状況を検証し、リモートの復旧チーム編成し、エンジニアをリカバリ機器とともに大寒波の影響の及ばない地域に送り出して待機をさせた。この隙のない対応に顧客は感激し、同社の顧客は「嵐が到来する前に、具体的な対応策を示してくれたのはeMazzantiだけだった」と礼状を寄せたほどだった。
その年、eMazzantiは、中堅中小企業の優れたIT活用に対して送られる賞を受賞した。eMazzantiの対応が評価された結果だった。