Salesforceの製品ポートフォリオには、Eコマースという大きな穴があった。同社による28億ドル規模のDemandware買収は、この穴を補完するものだ。今回の買収を受けて、マーケティングの競合企業であるAdobeも、ShopifyやMagentoなど、同様の企業の買収を強いられる可能性が高い。
Salesforceによれば、Demandwareのプラットフォームを新たに「Salesforce Commerce Cloud」として提供する予定だという。DemandwareとSalesforceは多くの共同顧客を抱えており、Salesforceは同社の顧客関係管理(CRM)ツールと連携して利用できるEコマース機能をもっと必要としていた。
Demandwareが小売業界を主なターゲットとしている一方、Salesforceは過去3年間ターゲットとする業界を増やそうと取り組んでいる。その成否は、Eコマースを幅広い業界向けに提供できるかどうかにかかっている。Salesforceの最高執行責任者(COO)Keith Block氏は、「今後、Demandwareの名前を聞く機会が増えていくのは明白になっていた。顧客は今回の合併を求めてきていた。この買収によって、小売業や顧客の製品に多くの相乗効果が生まれると考えている」と述べている。
Salesforceの経営陣は、これによってEコマースとCRM、マーケティングが1つに融合するとしている。また今回の買収には、すでに「Commerce Cloud」の提供を開始しているOracleとの競争を有利に戦うために、ある程度の緊急性があった。
Pacific CrestのアナリストBrendan Barnicle氏は、調査ノートの中で次のように述べている。
流通チャネルに対する調査で、Oracleがマーケティング契約を獲得する際には、同社が強力なEコマースソリューションを持っていることが有利に働いているという情報を得ている。SalesforceとAdobeはEコマース機能を提供していなかった。このため、SalesforceとAdobeはこの穴を埋めるために買収を行う可能性が高いと予想していた。Demandwareは屈指のクラウドEコマースソリューションであり、Salesforceにとっては強力な機能強化になる。Adobeは今後ShopifyやMagentoなどのEコマースベンダーを買収する可能性があるとわれわれは考えている。
SalesforceがDemandwareに支払ったプレミアムは、この買収にある程度の緊急性があったことを示している。Barnicle氏は、Salesforceの買収は、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)企業の収益乗数(multiples)を上昇させることになると述べている。同氏は買収対象となる可能性がある企業として、Shopify、HubSpot、Zendesk、Amber Road、Five9、MINDBODY、ChannelAdvisor、AppFolioなどを挙げている。
