インテリジェントエコノミーにより、ビジネスの創造機会が生まることで多くの経済的なメリットを享受できる一方で、多くのデジタルリスクが伴う可能性が指摘されている。インテリジェントエコノミーは、ハイリターンでハイリスクな経済圏と考えることもできるだろう。
総務省の「AIネットワーク化検討会議」中間報告書では、AIネットワーク化の4つの進展段階において顕在化するリスクをあげている。
出所:総務省 「AIネットワーク化検討会議」中間報告書 2016.4.15
人間とAIネットワークシステムとが共存する4番目の進展段階では、制御喪失リスクや民主主義と統治機構に関するリスクの顕在化を指摘している。AIの進展に伴い、例えば、ロボットによる代理戦争など、人間自身が制御できない環境が生まれてしまうリスクも懸念される。
インテリジェントエコノミーの進展によって、AIなどによるインテリジェント化された自律的な経済圏が形成されるようになるが、その一方で、さまざまなリスクも顕在化する。
そのため、人間はAIと共存しつつも、人間同士のつながりや、人間自身の信頼性がこれまで以上に重視されるようになる。信頼できる人、信頼できる企業同士のコラボレーションなど、組織の枠組みを超えた人間同士の信頼性やつながりを支援する経済の枠組みづくりが進んでいくことになるだろう。
- 林 雅之
- 国際大学GLOCOM客員研究員(NTTコミュニケーションズ勤務)。NTTコミュニケーションズで、事業計画、外資系企業や公共機関の営業、市場開 発などの業務を担当。政府のクラウドおよび情報通信政策関連案件の担当を経て、2011年6月よりクラウドサービスの開発企画、マーケティング、広報・宣伝に従事。一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) アドバイザー。著書多数。