質疑応答でのシェアをめぐるやりとりについては、「トップを取れないのはなぜか」との質問に対し、佐藤氏は「保守料を除いた売り上げ金額のシェアでは当社がトップで、2位がオラクル、3位がIBM、4位がSAPだと認識している」と答えた。冒頭の発言はこのコメントのエッセンスである。「保守料を除けば……」との言葉に、さまざまな想いが込められている。
また、データベースソフトの乗り換えについては、その上で動くアプリケーションの移行も必要になってくるので、短期間でシェアが大きく変動するものではないことも説明。ただ、「4月に発表した移行支援プログラムに対して非常に多くの問い合わせをいただいており、パートナーとともに相当数のプロジェクトが進みつつある」と強い手応えを感じているようだ。今後はクラウドとのハイブリッド利用も広がっていく中で、この分野のシェア争いに新たな展開が見られるかもしれない。
「2020年に向けて日本語からの機械翻訳を実用レベルまで高性能化したい」 (豊橋技術科学大学 原邦彦 副学長)

豊橋技術科学大学の原邦彦 副学長
国立大学法人豊橋技術科学大学、日本マイクロソフト、ブロードバンドタワーが先ごろ、AI(人工知能)や機械学習を活用したインバウンド(訪日外国人)向けの多言語翻訳サービスを共同で開発すると発表した。原氏の冒頭の発言は、その発表会見で、3者連携による今回の取り組みの目標について語ったものである。
3者はこの取り組みにより、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピック競技大会において大幅な増加が見込まれるインバウンドに向け、観光情報や滞在中に必要となる医療、災害などの情報を多言語でリアルタイムに提供する翻訳サービスを2020年までに開発し、インターネット上の各種サービスで活用可能にすることを目指すとしている。
3者はこうしたターゲットを明確にしたうえで、実社会におけるさまざまなシーンでのAIや機械学習の活用促進に向け、機械学習の品質向上に必要となる情報の収集やビッグデータの構築を協力して推進。さまざまな業種の多くの組織の協力を得ながらビッグデータを構築し、データ収集と分析を行うことで翻訳サービス品質の向上を図っていく構えだ。
また、これらの成果を用いた新サービスの提供によるエコシステムを構築することで、継続的なビッグデータの構築、AIや機械学習の進展、そしてビジネスへの展開といった取り組みを可能にし、社会インフラにおける幅広い活用につなげていきたいとしている。
3者それぞれの役割としては、豊橋技術科学大学は分野ごとの重要語句の抽出や目的に応じたデータの分類、匿名化、非識別化により、安全なデータ活用を実現するとともに、AIや機械学習によって実現されるサービス利用者との協業フレームワークを構築する。
日本マイクロソフトはAIや機械学習のテクノロジに加えて、膨大なデータの安全な管理、活用のためのクラウド基盤「Microsoft Azure」を提供する。ブロードバンドタワーはIoT(Internet of Things)基盤となるサービスの構築に加え、AI・機械学習を活用した事業構築のために新会社「エーアイスクエア」を設立、社会インフラやビジネスへの導入を担うとしている。

3者連携の概要(出典:3者共同発表の資料)
原氏は会見で、「機械翻訳は、欧米言語間ではすでに実用レベルに達しているが、日本語から他の言語への翻訳の性能はまだまだ低レベルにとどまっている。そこで今回の3者による取り組みによって、汎用ではなく用途を絞ることで、日本語からの機械翻訳を実用レベルまで高性能化していきたいと考えている」と語った。そのターゲットとして、2020年を見据えたインバウンド向けというのは打ってつけだろう。
この分野は国家プロジェクトも動きつつあるが、産学連携による今回の取り組みにはスピーディーな動きが期待できそうだ。大いに注目しておきたい。