分析結果を改善施策に落とし込む
さて、分析によって発見したポイントに対して、施策を実施するのが次のステップです。
データからは残念ながら過去のことしかわからないので、さらなる成長をするには改善案の立案が必要です。さまざまなデータを分析していると、そのサイトでのユーザーの傾向などはつかめますが、実際に施策における反応の検証などは施策実施後の検証によるところが大きいので、細かく早く改善サイクルを回す努力が必要です。
例えば新しいアプリケーションや機能を開発する際は、事前にインタビューやアンケートなどで対象となるターゲットを定め、その課題となる問題を発見します。それらを整理し、適切な課題解決方法を定義してモックアップを作成します。モックアップでターゲットの課題を解決しうる機能やアプリケーションになっているかはユーザーテストなどを通して検証できます。
このサイクルを早く細かく回すことでMVP(Minimum Viable Product)を見つけ、実際に開発へと移行できるでしょう。このような手法はリーンスタートアップで広く知られています。
また、すでにリリースされた機能改善などは複数の検証計画を立てて、A/Bテストを実施するケースが多いでしょう。個々の検証計画を1週間などの短いサイクルで回し続けて、勝ちパターンを見つける方法もあれば、事前にいくつもの検証項目を計画して、分析フェーズで個々の効用値に分割して検証し、どんな要素の組み合わせが効果的かを測る「多変量テスト」で明らかにするケースもあります。
多変量テストの場合は属性と組み合わせを全部検証せずに済むように実験計画を練り、少ない実験で要因効果を知るための方法である「直交表」によって検証パターンを絞り込むことも可能です。近年ではコンピューターリソースも潤沢になり、検証回数を重ねることもそれほど多くないので、レガシーな手法になりつつあります。
一方、近年ではバンディッドアルゴリズムという手法で最適化を実施することもあります。これは探索と検証を交互に繰り返し、徐々に最適な組み合わせに寄せていくことでもっとも効果の高いものに最適化させていくものです。Obama大統領が選挙時に同手法を用いて自身のウェブサイトの最適化を実施していたことからこの手法は広く知られています。またオンライン広告の最適化手法としても用いられています。
これらの施策を実施し、効果の見込みが高いものを採用し、正式な実装へと昇華させるのが一般的なサービス企業の改善業務です。皆様のPDCAに少しでもお役立ていただければ幸いです。
- 伊藤徹郎
- インターネット金融グループを経て、データ分析企業でデータアナリストとして様々な業種の企業を支援。その後、大手レシピサイトでデータ分析やディレクター業務などを経て、現在はFinTech企業でデータ分析やサービス開発などに従事。RとSQLをよく書いている。