Intel Securityの公共部門担当CTOのScott Montgomery氏によると、米国の多くの人々は、国内で何らかの事件が発生するまで危機感を持たないだろうという。
Montgomery氏は、「痛い目を見るまで積極的な取り組みを始めないというのが典型的な米国人のものの考え方だ。20万人の住民に影響を与えるような停電が、ウクライナではなくペンシルバニア州ピッツバーグで発生したと考えてほしい。ウクライナの事件を知らない人は多いかもしれないが、ピッツバーグの事件であれば、われわれはいまだにその停電について語っているはずだ」と述べている。
Montgomery氏は、「新聞の一面で報道されたくないがために、他よりも努力しているという組織もある。米陸軍は、既存電力網からの独立を推進し、独自の電力網を構築することで、フォート・ブラッグ陸軍基地とフォート・フッド陸軍基地それぞれが、地域の電力網に依存しなくても済むようにするために、米連邦議会に対して2億ドル強の追加予算を申請した。米陸軍によると、何者かがテキサス州キリーンに停電を引き起こした場合、戦闘能力に深刻な影響が及ぶという。われわれは、こういったインシデントとは無縁である必要がある」と述べている。なお、フォート・フッド陸軍基地はテキサス州のキリーンに位置している。
ニューヨーク州ニューヨーク市も予防策を講じている。同市は水源の水質に問題がないことを確かめるために、80マイル(約128.7km)離れた帯水層の水質を監視している。Montgomery氏は、市内から遠く離れた場所で水質試験を実施することで、水源からの水が市内に到達する前に問題をくい止められるようになると述べるとともに、「しかし、すべての自治体がそういった水質試験を実施するための予算や施設を有しているわけではない」と付け加えている。
CYBERBITのサイバーセキュリティ担当ソフトウェアマネージャーのDaniel Cohen Sason氏によると、重要なインフラネットワークを「隔離する」、すなわち「外界から切り離す」ことができれば、外部から攻撃できないようになると考えられているが、ハッカーらは機密性の高いネットワークとオープンなITネットワークの接点を必ず見つけ出してくるという。これにより、「ICSやSCADA(コンピュータによってシステム監視とプロセス制御を行うシステム)といった重要な産業システムネットワークが外部からの攻撃にさらされることになる。運用技術(OT)ネットワークは、旧式のデバイスや標準化されていないプロトコルをベースにしているため、ネットワーク管理者がこういった接点に気付いていない場合もしばしばある。その結果、ハッキングの脅威は当初想定されていたものよりも大きくなる」と同氏は語っている。