--ネットワーク仮想化であるNSX事業が18カ月で400%成長しているというが、今後vSphereに匹敵するような事業になるのでしょうか?
vSphereを最適に動かすにあたって、2つのボトルネックがあった。ストレージとネットワーキングで、これらも同じようにコントロールできなければ効果を最大化できない。それに対してVMwareは、Virtual SANとNSXで対応している。
vSphereをシングルノードで分割するような場合はNSXは不要だが、マルチノードになり、ライブマイグレーションのニーズが出てくるとネットワーク仮想化が必要になる。さらにはLANではなくWAN--遠隔地でやりたいという場合でもニーズがでてくる。
このような状況にあわせて、VMwareはNicira買収によりネットワーク仮想化を獲得したわけだが、ITをICT(Cは通信(Communication)で”情報通信技術”のこと)というように、ITとネットワーキングは対になっている。インフラの中のネットワーキングも、CPUと同じようにワークロードによって自由に変えたいとなったときにNSXが必要になる。
NSXはVMwareにとって戦略的な製品となっており、他社との差別化を図っている。Nicira買収は成功だったといえる。
--VMwareが進めるクロスクラウド戦略がクラウドベンダーに与える影響は? VMwareはどんな存在といえるか?
IaaSは価格競争が激しいレッドオーシャン市場になった。3~4社、グローバルでも5社ぐらいしか入れないだろう。AWS対Azureの構図が出来上がりつつあり、これから参入する企業は苦しい戦いになる。
しかし、企業はクラウドでもすべての環境をシングルベンダーにすることはあまりないだろう。クラウドのほうがベンダーロックイン度が強く、アプリケーションレイヤーまでフルスタックでシングルベンダーになる可能性があるが、AWSやAzureの戦略的パートナーとして共同開発をするような企業はごく一部で、多くの企業はリスクヘッジのために複数のベンダーを利用すると考える。また、そもそもすべてをクラウドにするわけではなく、オンプレミスとクラウドを使い分けるのが現実的だろう。
VMwareは管理という点で、それらをつなぐポジションにある。VMwareはvCloud Airを持つが、本格的にパブリッククラウドをやるとなると複数のリージョンを急速に立ち上げなければならない。これは莫大な投資となり、おそらくは見合わない。それならとAWSとAzureとパートナー関係を築くことで、クラウド時代の自社の位置をきちんとキープしている。
--Dellの買収はどのような影響を与えるでしょうか?
あまり変わらないと見ている。(EMC傘下の)これまでと同じように、自治権をもってやっていくだろう。DellとEMCの合体で、VMwareが重要な存在だったことは間違いない。
だが、VMwareにとってDellとEMCの合体にどんなメリットがあるのかとなるとまだわからない。1つ言えるのが、Dellが持つMicrosoftとの密な関係。EMCもVMwareも、この関係を利用できる。