インターネット第2四半世紀に起こるのは技術の予期しない融合
連載第1回目の前回、WWWの誕生から今年でちょうど四半世紀を迎え「私たちの環境となり、私たちの血肉となった」インターネットは、今後、「人工知能(Artificial Intelligence:AI)などと融合しながら多様な変異を遂げ」、結果として、「私たちの意識の後景にどんどん退いていくだろう」ということを述べた。
現在、私たちの周囲にはAIのほかにもAR拡張現実(Augmented Reality:AR)や仮想現実(Virtual Reality:VR)、ビットコイン、ビッグデータ、ウェアラブルコンピュータといった個々の新しい技術が点在しているけれども、次なる四半世紀にはこれらが旧来のテクノロジをも巻き込みつつ、思いも寄らない結合を果たし、まったく新しい情報環境を形作っていくだろうということである。
もちろんそうした技術統合の根底にはことごとくインターネットが介在している。そして私たちが暮らす世界の社会構造や経済基盤、文化形態、さらには人間の常識や価値までもがこれまでとは異なる位相へとシフトしていくように思われる。
新たに誕生したテクノロジが古い既存のテクノロジに全面的に取って代わるという言説は以前からしばしば使われてきたメディアお得意の話法で、実際、新しいものは古いものを部分的に無力化したり形骸化したり空洞化したりする。しかし、それは話題を喚起するためには有効かもしれないが、あまりにもわかりやす過ぎる図式なのではないだろうか。現実は通常もっと複雑かつ多様な展開を見せる。
最近テレビでもよく放映され日本でもかなり注目されるようになった世界的なプレゼンテーションイベント「TED Conference」(TEDとはTechnology Entertainment Designの頭文字)の創設メンバーである米国の建築家Richard ・S・Wurmanはその著書「それは『情報』ではない。―無情報爆発時代を生き抜くためのコミュニケーション・デザイン」(エムディエヌコーポレーション)で次のように述べている。
新しい技術が登場するたびに、それが他の技術を淘汰すると騒がれる。しかし、そうした予言が当たった試しは少なく、むしろ、新技術は既存の技術にプラスされることが多いようだ。コンピュータは紙を過去のものにすると言われたものだが、現実はその反対だ。
コンピュータはグーテンベルクの印刷機以上の恩恵を出版印刷業界にもたらし、私たちは、プリンタやコピー機から次々と吐き出される書類の中で溺れかけている。ビデオも、映画の火を消すとまで言われたものだが、現在は以前よりも多くの映画が製作されるようになっているではないか。
「TED」の創設メンバーであるRichard ・S・Wurmanによる『それは「情報」ではない。―無情報爆発時代を生き抜くためのコミュニケーション・デザイン』(エムディエヌコーポレーション)。ITに関する理論書としてだけでなく、「編集=情報デザイン」にまつわる本として読んでも面白い (Amazon提供)