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Rethink Internet:インターネット再考

イノベーションは既存のテクノロジの「編集」によって生まれる(前編) - (page 2)

高橋幸治

2016-10-09 07:00

 前述の通りWurmanは物理的な建造物を設計する文字通りの建築家だが、筆者の専門である「編集」に極めて近い「情報デザイン」に関する発言も積極的に行っており、自らを情報建築家(インフォメーション・アーキテクト)とも名乗っているくらいだから、こうした情報技術やメディアに対する指摘もなかなか的を射ている。「これからは◯◯の時代」「◯◯はもう終わった」式の語り口は一見威勢がよくて人々の耳目を集めるけれども、ことはそう単純なものではないのだ。

既存のテクノロジを寄せ集めて「編集」したGutenberg

 では、なぜ「ことはそう単純なものではない」のか。

 それは冒頭述べたように、技術は個別に発達していたもの同士があるとき突然、予想もしなかったようなかたちで溶け合い、突拍子もない化学反応を引き起こしたりすることがしばしばだからである。Wurmanの先の引用の中にGutenbergによる活版印刷の話が登場するが、彼も決して無からすべてを発明したわけではない。

 中世から近代への扉を一気に開きインターネットに比肩する情報爆発を引き起こした活版印刷は、15世紀中葉までに成熟していたさまざまなテクノロジがGutenbergの魔法によって一気に組み合わされた結果だ。イギリスの歴史学者であるJohn Manによる「グーテンベルクの時代 印刷術が変えた世界」(原書房)には以下のような記述がある。

 活版印刷術は霊感(インスピレーション)であるとともに発汗(パースピレーション)、アイデアであるとともに発明だった。アイデアの誕生というと、まるで突然の啓示であるかのように響く。「エウレカ!」(しめた!)とアルキメデスが有名な叫び声をあげて、風呂から飛び出したというような具合だ。

 しかし、アイデアはどこからともなく頭に浮かんでくるものではない。(中略)アイデアはそれまでの発展の枠組みから芽生えてくるもので、その同じ枠組み―この印刷術の場合、パンチ作り、鋳造、冶金術、ワインとオイルの搾り器、製紙など―がさらに深化することが必要となる。

マン「グーテンベルクの時代」(Amazon提供)
イギリスの歴史学者John Manによる『グーテンベルクの時代 印刷術が変えた世界』(原書房)。謎の多いGutenbergの生涯を想像力豊かに描き出しながら、15世紀中葉のヨーロッパにおける宗教や文化、そして技術の時代的背景などについても触れられており、あたかも小説のような趣もある興味深い一冊(Amazon提供)

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