Rethink Internet:インターネット再考

イノベーションは既存のテクノロジの「編集」によって生まれる(前編) - (page 3)

高橋幸治

2016-10-09 07:00

 ここに記されているように、Gutenbergは活字に塗られたインクを羊皮紙および紙に定着させるための加圧の方法を、ぶどうやオリーブを絞る機械の技術から応用した。

 当然のことながら活字の制作に必要な鋳造技術についての知識も不可欠だったわけだが、もともと金属加工職人であったGutenbergはそうした活字製造の基礎となるテクノロジを熟知していた。


 同時に書物の根幹を成す紙を安価かつ大量に生産する製紙技術の成熟も、Gutenbergのアイデアを実現に向わしめる推進力となったことだろう。

 このようにどんな技術同士が結び付くのかはほぼ予測不可能であり、その時代の広範な領域に渡るテクノロジがどの程度にまで進化を遂げているかというタイミングも重要な因子となる。

 1989年に米国のコンピュータ科学者であるJaron Lanierが「Virtual Reality」という言葉を初めて使用し、彼が創設したVPL Research社のさまざまな製品と共に未来の技術としてのVRがにわかに脚光を浴びたが、そのブームは数年でまるで嘘のように沈静化してしまった。

 しかし、それから約25年の時を経て再びVRは時代の表舞台に再浮上する。これも、パーソナルコンピュータや家庭用ゲーム機の高性能化、CG技術の進化、さらには大仰なHMD(Head Mounted Display)の代替となるスマートフォンの出現といった関連技術との絶妙なタイミングでのマッチングが引き起こした結果と言えるだろう。

<後編に続く>
高橋幸治
編集者。日本大学芸術学部文芸学科卒業後、1992年、電通入社。CMプランナー/コピーライターとして活動したのち、1995年、アスキー入社。2001年から2007年まで「MacPower」編集長。2008年、独立。以降、「編集=情報デザイン」をコンセプトに編集長/クリエイティブディレクター/メディアプロデューサーとして企業のメディア戦略などを数多く手がける。現在、「エディターシップの可能性」をテーマにしたリアルメディアの立ち上げを画策中。本業のかたわら日本大学芸術学部文芸学科、横浜美術大学美術学部にて非常勤講師もつとめる。

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