クラウドの値打ち

クラウドの先--「成果報酬型ITシステム」への道(前編)

戸賀慶 小原 誠

2016-11-07 07:00

 クラウドの本質的な価値や導入を成功させるための要点をまとめ、日本の企業ITの在り方を掘り下げる連載の最終回となる。今回は、ビジネスを取り巻く環境の変化と「マルチスピードIT」時代に求められるITインフラストラクチャの姿、それを実現するクラウド導入の成功の要点についてまとめる。これまでの内容を振り返りながら「所有」と「利用」という切り口で、企業や組織の変革につながる真のクラウドとはどのようなものか述べる。

ITインフラストラクチャを取り巻く環境の変化--デジタル化と「マルチスピードIT」

 ビジネスの主戦場は「モノ」中心から「ヒト」(体験)中心にシフトし、圧倒的なコストダウンとスピードの波が、既存のバリューチェーンの破壊とエコシステムの再構築を推し進めている(Digital Disruption:デジタル化による創造的破壊の意)。そのようにビジネスが「デジタル化」していく中で、そのスピードで行動し、変化を前提として企業や組織を構築していくためには、新たな組織・役割、新たなプロセスが必要とされており、ITもまた例外ではない

 今日のITには、既存事業における信頼性の高いサービスの継続に加えて、社会を変革するようなビジネス創出の原動力となる新サービスの提供という、スピードや性質の異なる要望に応えることが求められている。「マルチスピードIT」である。

 伝統的なウォータフォール型開発手法により築き上げられた、巨大で信頼性の高いサービスを支える「従来型IT」は、「記録のためのシステム」(System of Record:SoR)であり、主に業務プロセスの効率化にフォーカスしていた。

 一方で、「New IT」とは、新事業の創造と投入スピード(Time To Market:TTM)の大幅短縮、顧客の獲得と維持にフォーカスする。「New IT」は、「ヒトとの関係を築くためのシステム」(System of Engagement:SoE)や「洞察し新たな知見を得るためのシステム」(System of Insight:SoI)からなり、TTM短縮を至上命題としたアジャイル開発手法に基づきながら、トライ&エラー、スクラップ&ビルドを繰り返して築き上げられる(図1)。

マルチスピードIT時代のITシステムアーキテクチャモデル
図1:マルチスピードIT時代のITシステムアーキテクチャモデル

 このような「従来型IT」と、「New IT」からなる「マルチスピードIT」を支えるITインフラストラクチャの要件とはどのようなもので、従来のITインフラストラクチャとどのような違いがあるのだろうか。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    2025年はクラウドを標的にする攻撃が増加!?調査レポートに見る、今後警戒すべき攻撃トレンド

  2. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  3. セキュリティ

    Microsoft Copilot for Security--DXをまい進する三井物産が選んだ理由

  4. 経営

    プロが教える“使える業務マニュアル”--作成・運用を実現する3つのポイント

  5. ビジネスアプリケーション

    業務マニュアル作成の課題を一気に解決へ─AIが実現する確認と修正だけで完了する新たなアプローチ

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]