「マルチスピードIT」に求められるもの
マルチスピードITを支えるITインフラストラクチャには、「従来型IT」に分類される既存ビジネスを支えるシステムの安定的な継続に加えて、「New IT」に分類されるデジタルビジネスを実現するシステムの、柔軟かつ迅速な立ち上げが求められている。
このように安定性と迅速性という一見トレードオフの関係にみえる要件を両立させるためには、ITインフラストラクチャの構成要素を適時かつ適材、適所で組み合わせる必要がある。さらにそれらを統合的、自動的に運用保守し、システムのライフサイクルにあわせて継ぎ目なく移行可能なことが肝要である。
特に、TTM短縮を至上命題とし、試行錯誤を繰り返すデジタルな事業に対応するには、固定長、固定支出的なITインフラストラクチャではなく、急激なサービス規模の伸張・縮小に、モノ(物品)やヒト(運用保守)が対応可能であることが求められる。また、カネ(IT費用)もリソース(モノ・ヒト)の消費量に追従して変動可能なモデルであることが肝要である。
そこで、「マルチスピードIT」を支えるITインフラストラクチャの鍵となるのが、「クラウド(ITインフラストラクチャの「利用」)」なのである。
このようなマルチスピードITを支えるITインフラストラクチャに求められる6つの機能と、それにより得られるものをまとめた概念図「インテリジェント ビジネス クラウド」を以下に示す(図2)。

図2:インテリジェントビジネスクラウドの概念図
マルチスピードIT時代に対応した新たなITインフラストラクチャへの変革には、新たなテクノロジやサービスを導入するだけではなく、それに対応した組織・プロセス・文化(Dev & Opsなど)への変革や、IT費用負担の考え方(チャージバック/ショーバック)の整理も避けては通れない。