Fujitsu Laboratories of Europe(FLE)およびFujitsu Spain(富士通スペイン)は11月10日、医師による迅速な意思決定プロセスを支援する新しいヘルスケアシステム「Advanced Clinical Research Information System」を試作し、マドリッドのサン・カルロス医療病院で実証したと発表した。その結果、患者の記録を基にした診断にかかる時間を半減できたという。これにより、医師は患者の問診により多くの時間をかけることが可能となるだけでなく、従来よりも高精度に患者の潜在的なリスクを発見することができるとしている。今回開発した技術は、富士通スペインのクラウドサービスまたはプライベートクラウドサービスにおいて、将来の新しい医療API(Application Programming Interface)の基盤としていく予定。富士通が同日、抄訳で伝えた。
意思決定を支援するシステム:サン・カルロス医療病院における典型的なワークフロー
このシステムはサン・カルロス医療病院の精神病の分野における専門医と、FLEおよび富士通スペインが連携して、グラフデータ解析技術やセマンティックモデル化技術などの人工知能技術を実装する形で開発された。スペインの医療現場で求められる要件を満たすために、FLEのデータ解析技術と富士通研究所の匿名化技術を組み合わせ、ヘルスケア分野に応用したもの。
実証は6か月以上に渡って実施され、サン・カルロス医療病院の精神病の専門医が参加して、匿名化された3万6000人以上の患者の情報を使用した。Advanced Clinical Research Information Systemでは、この患者の情報や医療関連の論文情報などの関係性をグラフ構造で表現したデータを入力情報としている。
実証においては、患者のこれまでの診断結果や合併症、自殺の潜在的リスク、薬物依存、アルコール依存などの未解決問題の関連性について本システムを各医師が利用した。これにより、迅速に鍵となる臨床データを系統立てて検証でき、臨床における既存の問題点を特定できるなど、非常に高い精度のリスクアセスメントが実現できたという。そして、自殺・アルコール依存・薬物依存のリスクを85%以上の精度で算出できたとのこと。