約670億ドルをはたいてEMCを買収したDell Techonologiesが、2016年9月に新しいスタートを切った。エンタープライズ部門のDell EMCが目指すものは何か。Dellとの統合にあたってインテグレーションチームの共同リーダーを務め、最高経営責任者(CEO)のMichael Dell氏の下で統合計画を練ったDell EMCサービスとIT担当プレジデント、Howard Elias氏に話を聞いた。
--DellとEMCの統合ではEMC側のリーダーを務めた。大企業同士の合併で、最も難しかった部分は?
2社を単純に合計すると売上規模が760億ドル、社員は14万人という巨大な合併作業ですが、難しいと思ったことはありませんでした。統合計画はスムーズに進みました。
作業を始める前に確実にしておきたかったのは、両方のチームが同じレベルの信頼を持つこと。詳細のプランニングに入る前に、お互いを知り、これから一緒に働くにあたって信頼という土台を構築することを重視しました。これが良かったのだと思います。
EMC時代はグローバルエンタープライズサービスのプレジデント兼COOなどの役職を歴任、2003年に入社する前まではCompaqの買収に伴う形でHewlett-Packardに勤務。競合だったMichael Dell氏の印象について、「外から見ていた印象通りの人物だが、想像していたよりも誠実で正直な人だ。技術に精通しており、ビジネスや財務の知識もある稀有な人物」と評価した。
最初の60日間は意思決定を一切下さず、組織や構造についても決定せず、ただ社員が集まって製品、サービス、営業などさまざまな部門についてプランを話し合いました。意思決定に要する時間はどれぐらいなのか、どんな目標を持っているのか、作業計画はどうか、といったことを話すことで、それぞれのチームが歩み寄ることができました。実際の作業に入ったのはその後です。
その成果があって、買収発表から1年、買収完了から1カ月で製品(Dell PowerEdge搭載VxRailやVxRack System 1000など)を発表できた。買収作業がうまく言った要因に、トップの人材が動いたことも挙げたい。
それから、買収とはいえ、今回の取引は15年がかりの作業でもあります。EMCとDellは2001年にストレージで提携しており、既に協業関係を構築していました。お互いの社員を知る機会や協業の経験をたくさん積んでいたし、お互いの文化も知っていました。このようなことから、いきなり知らない企業2社が統合するという類のものではなかったことも大きい。
われわれは統合計画の初期段階で、DellとEMC、ほぼ半々で構成される7万5000人のキーメンバーを対象に調査を実施しました。文化、価値観、信じていることなど22の項目について評価するものですが、上位5つは順位を含めて全く同じでした。顧客フォーカス、成果主義、競合に勝つことへのコミット、倫理的に正しいことをする、自分の倫理で行動する、これが上位5つです。
--Dell EMCのポートフォリオは今後どうなるのか? Dell EMC WorldではPowerEdgeを搭載したVxRackなどが登場したが、単に製品を組み合わせる以上の統合はあるのか? Dell EMCからどのような製品が登場すると期待できるのか?
Dell Techonologiesでは、製品だけでなくどのように製品を顧客に提供するのかの考え方や戦略も大きなメリットをもたらすと考えています。
例えば、顧客によって技術をコンシュームする方法は異なる。顧客がサーバ、ストレージ、ネットワークといったコンポーネントを購入したいのなら可能です。もし、VxRail、VxRackなどのコンバージドインフラのように、統合されたソリューションを構築したい場合は、それも可能です。また、サービスとして利用したいという顧客に対しては、マネージドサービスも用意します。顧客の場所、規模などに関係なく、あらゆるニーズを満たすことができるポートフォリオがあり、これを拡充していきます。
--Dell EMCがハードウェアにフォーカスする理由は?
ハードウェアのみにフォーカスしているわけではありません。フォーカスはシステムとソリューションであり、ハードウェアはその一部です。ハードウェアの他に、ソフトウェア、サービスもあります。
顧客が単にハードウェアインフラのみを購入しなくなっているトレンドは理解しています。世の中の流れはソフトウェアかもしれませんが、ソフトウェアは何かの上で動く――つまりソフトウェアを動かす土台が必要です。現時点では、ハードウェア以外に手段がありません。
Dell EMCチームはインフラが大好きな集団です。システムからどのような成果が得られるかが顧客のフォーカスであり、われわれはハードウェア、ソフトウェア、サービスを組み合わせてこれを支援し、最高の成果をもたらすものを提供します。