一方、採用を見送った理由としては、「既存の基幹系システムと同レベルの性能や運用を求めると、一般的なパブリッククラウドサービスでは期待したほどコストが下がらない」「セキュリティやパフォーマンスにおいて、提供サービスに対する技術的な裏付けがとれない」「既存の基幹系システムを移行するためのコストやリスクを考慮すると、クラウドを利用するメリットは少ない」「自社の基幹系システムに適切なクラウドサービスの選定が難しい」といった声が寄せられたという。
藤岡氏はこうした調査結果から、「基幹系システムのクラウド利用への期待は高いが、自社の要件に適合するクラウドが見つからない」、および「既存の基幹系システムを移行する場合には、一般的なクラウドサービスを利用するメリットは少ない」との見解を示した。
CTCではこうした顧客ニーズに対応して、基幹系システム向けに特化したクラウドサービス「CUVICmc2」を提供しており、今後も一層強化し注力していく構えだ。それにしても上記の調査結果は興味深い内容である。CTCには今後もさまざまな角度から顧客調査に基づくセミナーを継続して開いていただきたい。
「自然言語処理技術の最先端を追求したい」 (米Basis Technology Carl Hoffman CEO)
米Basis TechnologyのCarl Hoffman CEO
多言語対応の言語処理ソフトウェアを手掛ける米Basis Technologyの日本法人であるベイシス・テクノロジーが先ごろ、事業内容について記者説明会を開いた。米国本社の創業者およびCEOで日本法人の社長でもあるCarl Hoffman(カール・ホフマン)氏の冒頭の発言はその会見で、自然言語処理技術のエキスパート集団としての意気込みを語ったものである。
同社のソフトウェアは、最先端の各種自然言語処理技術を用いて各国語のテキスト情報を迅速かつ適切に処理するためのソリューションを提供。その中核をなす言語処理プラットフォーム「Rosette(ロゼッテ)」は世界各国55言語に対応し、言語・文字コード判別、Unicode対応、形態素解析、固有表現(キーワード)抽出などの機能が、各種情報検索システムやテキストマイニング製品に採用されている。
Rosetteは現在、米国、英国、日本、シンガポールなどの政府機関、およびGoogle、Amazon.com、Microsoft、Airbnbなど、世界で250以上の企業・組織に利用されているという。
Hoffman氏がBasis Technologyを創業したのは1995年。言語処理ソフトウェアの多言語対応として最初に開発したのは日本語版だった。その理由は「当時どこもやってなかったから」。これが多くの有力な企業・組織に採用されるきっかけになったという。
その技術の最先端ぶりもさることながら、筆者が興味を抱いたのはRosetteという商品のネーミングだ。古代エジプト史上最大の発見といわれる「Rosetta Stone(ロゼッタストーン)」(写真参照)から採ったのかと聞いたところ、同氏は「その通り。本当はRosettaにしたかったが、ドメインを手に入れられず、本来のアラビア語ではなくフランス語で1字違いの表記にした」と答えた。
現在、大英博物館に展示されているRosetta Stoneは、1799年、エジプトに遠征したナポレオン軍がナイル河口のロゼッタ村で発見した石碑で、古代エジプト文字解読の手がかりとなった。まさしく人類のコミュニケーションのルーツである。
Rosetta Stoneのレプリカ(筆者所有、大英博物館にて購入)
自然言語処理の技術者として最先端を行くHoffman氏が、そんな想いを胸に抱いているのは、なんともロマンのある話である。素晴らしい技術者にはロマンがあるというのが、長年取材してきた筆者の実感だ。今後の同氏の活躍に注目しておきたい。