監視カメラがIoT、AIセンシングに進化--パナソニックの取り組み

大河原克行

2017-03-08 08:19

 パナソニックは、ネットワークカメラの新製品として、新たに「i-PRO EXTREAM(アイプロ エクストリーム)シリーズ」を、2017年3月から順次発売する。

 ネットワークカメラでは、屋内BOX型、屋内ドーム型、屋外ドーム型、屋外ハウジング一体型の27機種をラインアップ。さらにネットワークディスクレコーダー11機種や映像監視ソフトウェアを第1弾製品群として発売する。

 監視カメラは、監視目的だけの利用から、マーケティング用途や在庫管理などの業務効率化用途にも広がりをみせており、同時に、カメラの高性能化に伴い、分析技術などが進化。設備事業者や警備事業者が取り扱う商材から、システムインテグレーターなどが取り扱う商材へと変化している。監視カメラのIoT化や、AIを活用した分析技術の進展が、それを加速しているといえる。

 今回、パナソニックが発売する新製品では、自動シーン認識技術によって識別しやすい映像を取得するなど、必要な情報を得るためのセンシングデバイスとしての役割を持つとともに、データの高圧縮技術や、情報を統合して解析するアナリティクス技術を組み合わせることで、IoT時代に対応した監視システムとしての提案を加速するという。 

 パナソニック システムネットワークス セキュリティシステム事業部・島田伊三男事業部長は、「パナソニックは、1957年に世界で初めて、真空管を用いた監視カメラを製品化して以来、今年で60周年の節目を迎える。

 国内ネットワークカメラ市場では、13年連続トップシェアを持っている」とし、「2020年に向けて、映像セキュリティ市場は拡大すると見られており、監視カメラ市場は1.6倍に拡大。それとともに、IoTやAIによる画像活用は3.5倍に増加する。今回の新製品で、IoT時代における新たな挑戦のドアを開けたい」とした。

 デジタルカメラ「Lumixシリーズ」で培ったiA(インテリジェントオート)機能を、監視カメラに応用。カメラが自動的に移動物体や移動速度、顔などを検知するほか、昼や夜、ヘッドライトなどの光量を自動検知。最適な設定をリアルタイムで行い、動きや逆光で見えにくかった車両ナンバーや顔を撮影できるという。

 さらに、新たにカラーナイトビジョン技術を採用。従来製品に比べて5.8倍の感度を実現することで、夜間の暗い屋外駐車場や街頭監視においても、車両や衣服の色が識別しやすくなっているという。

 また、H.265規格の高圧縮技術に加えて、同社独自のスマートコーディング技術を採用することで、最大50%のデータ削減を可能にしたほか、顔部分だけを検知し、顔周辺の画質を保ちながら部分圧縮調整を行う「スマートフェイシャルコーディング」も圧縮率の向上に貢献するという。同社では、「同じハードディスク容量でも2倍の録画日数になる」としている。

 さらに、シマンテックとの協業より、デバイス証明書を監視カメラに標準搭載。開発プロセスにおいても最新脅威にも対応した脆弱性対策を活用。強固なIPデータセキュリティシステムを採用することで、エンド・トゥ・エンドのシステム暗号化を実現。サイバー攻撃対策や情報漏えい対策を行っているという。

 「130万台の監視カメラを含むIoT機器がウイルスに感染し、機器の誤作動や踏み台にされるといった事件があった。監視カメラにおいても、サイバー攻撃のリスクや情報漏えいリスクが発生している。単に情報を暗号化するだけでなく、システム全体のセキュリティを実現するのが特徴」(パナソニック システムネットワークス セキュリティシステム事業部市場開発部・朝比奈純部長)と、セキュリティ対策にも自信をみせた。

 同社では、これらのセキュリティインフラを活用して、2017年度から、i-PROリモートメンテサービスを開始することを発表。顧客の監視カメラシステムを、センターから遠隔監視し、異常発生時の対応やハードディスクの予兆診断などを行うことで、業務ロスの抑制や録画欠損などのダウンタイムロスを図るという。

 そのほか、ネットワークディスクレコーダーには、高速RAID制御をハードウェアとして行うTURBO RAIDを搭載。「これにより、30時間の復旧時間が1時間に短縮できる」という。また、稼働が少ないハードディスクをスタンバイ状態にして消耗を抑制することで、ハードディスクの交換周期を最大7年まで長期化し、メンテナンスコストの削減につなげることができるという。

 一方で、新たに監視カメラと一体化した「新・人数カウントシステム」を提供。±5%以内の高精度で商業施設の来店人数などをカウント。1台でHDカメラ4台の撮影を実現することで、専用装置との組み合わせに比べて、TCOを約40%削減できるという。

 また、映像監視ソフトウェア「WV-ASM300」は、これまで要望が高かったカメラからレコーダーまでの一括設定を可能にしたほか、サムネイル検索に対応しているのが特徴だ。

 パナソニックでは、今回の新製品を通じて、事件の早期解決などの捜査支援としての活用や、事故の未然防止、事後処理の迅速化のほか、マーケティングや在庫管理、作業改善などにも活用を提案。「監視カメラというと、コストという観点で捉えられることが多いが、それだけでなく、新たな情報活用手段としても利用できるようになる」(パナソニック システムネットワークス セキュリティシステム事業部・島田伊三男事業部長)という。

 ここ数年、監視カメラに対する要求は大きく変化しているという。

 「これまではきれいに撮影し、しっかりと録画するというパッシブ(受け身)なセキュリティシステムが求められていたが、これから求められるのはアクティブなIoT情報活用ソリューション。さまざまなセンサを組み合わせて、AI技術を活用して必要な情報を取りに行くAIセンシングへと進化。さらに情報を統合し、解析し、リアルタイムに活用するAI解析へと進化させる。取れなかった情報を取り、過酷な環境下でもそれを維持する。また、クラウドネットワークの負荷を軽減し、分散処理による高速データ解析ができ、データセキュリティにも優れたものでなくてはならない」(同)とする。

 「監視カメラがIoTとして進化する上で、パナソニックはトップランナーであり続けたい」(パナソニック システムネットワークス セキュリティシステム事業部市場開発部・朝比奈純部長)とした。

下記は発表会のスライド

パナソニック システムネットワークス セキュリティシステム事業部・島田伊三男事業部長

パナソニック システムネットワークス セキュリティシステム事業部・島田伊三男事業部長

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