Gartner Symposium

ERPベンダーの戦略を理解し「ポストモダンERP」へ--ガートナー本好氏 - (page 2)

日川佳三

2017-04-05 07:30

ERPベンダーの製品戦略を押さえておく

 講演の中盤では、ERPベンダーの動向を説明。総論として、ベンダーのERP戦略に応じて入手できるERP製品は変わってしまうので、ユーザーは必要とするERP機能を自律的に選ぶことができなくなっていくという。

 2大ベンダーの1社であるSAPがとっている戦略は、ガートナーが提唱するポストモダンERPそのものだ。S/4 HANAをコアERPに置き、買収した製品群を周辺に置く。HOOFモデルにマッピングすると、ハイブリッドモデルとフリップモデルに集中する。

 現在オンプレミスの一枚岩としてSAP製品を使っているユーザーは、いずれはハイブリッドモデルかフリップモデルへと移行せざるを得ないのではないか、と指摘した。

 もう1つの2大ベンダーであるOracleは、垂直統合型で全レイヤをカバーしに行っている。データサービスやソフトウェア、プラットフォーム、などをフルスタックで提供する。オンプレミスの一枚岩の環境を対象としたERP製品も半永久的にサポートすることを発表している。

 このように、SAPとOracleの2大ERPベンダーで、将来の製品ポートフォリオのアプローチが異なっている。

クラウドERPへの移行プロセスを吟味せよ

 国内では、まだERPスイートを導入しておらず、ベストオブブリード型で個別の業務ソフトを組み合わせているユーザーが相当数いる。本好氏は、こうした近代化以前のユーザーがポストモダンERPへと移行する際にとりうる、3つの経路について説明した。

 近代化以前のユーザーにとっての現実解の1つは、近代化を図ること――つまり、ERPスイートを導入することだ。この方法とは別に、フリップモデルやハイブリッドモデルへと一足飛びに移行する方法もある。

 (1)として、ERPスイートを導入して近代化を図るやり方は、石橋を叩いて渡る例だ。保守的な企業に向く。ERPスイートを導入し、ハイブリッドモデルに移行し、最終的にフリップモデルに移行する。

 このやり方で注意しなければならない点は、現行製品のロードマップを確認しておくことだ。ERP製品の都合に合わせて移行時期を急がなければならなくなることもあり得る。さらに、ハイブリッドモデルにおいては製品ポートフォリオの重複にも注意しなければならない。

 (2)として、ERPスイートを介さずに一気にハイブリッドモデルやフリップモデルを狙うやり方は、難易度が高い。「何らかの理由があって、あれだけ流行ったERPをまだ入れていない。こういう企業がクラウドに一気に移行するのは考えにくい」(本好氏)。このため、経営体制が一気に変わった企業などに向く。

 このやり方の留意点として「IT部門が独走しても、周りの反対にあう。先行事例から学んだほうがいい」(本好氏)と指摘する。

 本好氏は、ERPを刷新した3つの事例を紹介した。

 アシックスの事例は、石橋を叩いた例だ。以前は複数のERPを導入していたが、海外の売上拡大に伴い、SAPをパートナーにした。コアERPを近代化し、周辺の業務機能はクラウドERPを利用した。特に、タレントマネジメントなどはクラウドサービスを積極的に導入した。

 米八グループの事例は、部署ごとにスタンドアロン型で導入していた業務システムを刷新し、Oracle ERP Cloudを3カ月で導入した。販売管理分野で先行して導入した。会計と人事はオンプレミスのERPとのハイブリッド構成となっている。

 NRIセキュアテクノロジーズの事例は、設立16年で売上と従業員が20倍に増えたため、これに耐えられる業務ソフトをフリップモデルでクラウドファースト型で用意した。AWS上でSAP S/4 HANAを利用する。ユーザーインターフェースはHTML5で、モバイル対応も図った。

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