高い目標を掲げてデジタル変革を進めようとする企業の道程は険しい。これは、テクノロジそのものよりも人間の問題だ。
Deloitte LLPのマネージングディレクターであり、同社のCIOプログラムで調査ディレクターを務めているKhalid Kark氏は「われわれは、産業としてのデジタル化とは何かを理解し始めたところだ」と語る。「われわれは、ようやくデジタル化がもたらす影響の巨大さを認識し始めた。しかし、そういった表面に出てくる変化を引き起こすために、どれだけ多くの努力が必要になるかは、まだ分かっていない」
この記事では、読者が将来に向けて備えられるように、デジタル変革を推進するプロジェクトでよく発生する8つの問題を紹介する。
1.組織の変化
McKinseyによれば、実はチェンジマネジメントプログラムの70%が失敗しており、その原因は主に従業員の抵抗と経営陣のサポート不足だという。
Forresterのバイスプレジデントであり、CIOの役割に関する調査チームのプリンシパルアナリストを務めるMarc Cecere氏は、「デジタル変革には大きな変化が伴い、通常これには、従業員の職務や、賃金、上司たち、そして従業員の仕事の種類の変化が含まれる」と述べている。「その種の変化を起こすことは難しく、その大部分は科学では解決できない。人々の考え方がどう変わるか、どうすれば新しいビジネスモデルに適応できるかを知っている人材を参加させるべきだ」
Genpactの最高イノベーション責任者であり、Genpact Research Instituteの責任者を務めるGianni Giacomelli氏は、カスタマージャーニーの理解に関して、分断された組織は、デジタル変革を進める上で最大の障害の1つだと述べている。多くの場合、IT部門や事業部門のどちらか一方がこれを解決しようとするが、十分な協力ができないということが起こる、と同氏は言う。
Kark氏は、デジタル化には複合的な協力関係が必要になると述べている。また、「デジタル化を進める上での最善の行動は、分断された取り組みを個別に進めることではなく、チームを作って、説明責任を果たしながら、複合的で多次元的な取り組みを進めることだ」と付け加えている。
2.セキュリティ
SoftServeが最近発表したレポートによれば、半分以上(55%)の企業が、デジタル化を推進するための技術を導入した際の最大の課題はセキュリティだったと回答している。Cecere氏によれば、Forresterの調査でも、ほとんどの場合、セキュリティはデジタル変革を妨げる障害ランキングの首位に挙がるという。
サイバーセキュリティの問題は、複雑で、動的で、変化が速いとCecere氏は述べている。またセキュリティの問題には、取締役会や一般社会からも見えやすいという特徴がある。「失敗が許されないということが、さらに問題を難しくしている。データやビジネスプロセスの変更といった分野で失敗した場合、問題は起きるだろうが、最悪の事態にはならない。しかしセキュリティで失敗すれば、悲惨な結果になる可能性が高い」とCecere氏は述べている。
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