デザインとは「設計」のこと
UIデザイン、UXデザインなどという言い方をするが、デザインとは「設計」のことである。
UIのデザインというと、UIの見た目、特に装飾的な部分の視覚的デザインのことだけを指すと思われがちであるが、ある値をユーザーにどう入力させるか(数字をキーボードで入力させるか、ボタンで選ばせるか、スライダーを使うかなど)、規定外の入力があった場合にシステムはどう反応するか、なども含んでいる。
ユーザーに提示する情報があるとき、それを「どう提示するか」を設計することを特に「情報デザイン」と呼び、UI設計のためだけに留まらず、広い場面で重要な概念である。
プレゼンテーションのスライドの一枚一枚の書き方や全体の構成も、情報デザインをしっかり考えて作る必要があるし、地図や案内板の描き方などは言うまでもなく、さまざまな説明文、そしてアプリケーションや家電機器などのボタンのラベルの付け方ひとつとっても情報デザインを意識せねばならない。

ユーザーには、見た目やレイアウト、言葉の選びかたや順序なども情報の一部として伝わることを忘れてはならない。そこが、本来伝えるべき情報と食い違うと、Bad UIを産み出すことになる。
UXデザインは「UXを設計する」ということになるが、これはUIデザインや情報デザインとは毛色が異なる。UXはユーザーの内面の話であるので、直接的に「設計」することはできないのである。さらに、あるユーザーの受けるUXは直接観察することすらできない。
それゆえ、「UXデザイン」とは、制御可能な(複数の)要素を用いて、好ましい、もしくは狙った感覚をユーザーに生じさせる、あるいは好ましくない感覚をユーザーに生じさせないよう、UIを含めたシステムやその他の周囲の環境などを設計することであり、できる限りユーザーに配慮し、システムやサービス全体として設計することである。
あるいは、利用する全体やそれぞれの部分的な局面において、ユーザーが受け取るべき(提供側の都合だけでない)適切な感覚は何か、ということを見極めることが「UXデザイン」の主要な部分である、とも言えるだろう。
観察と推測・想像
ユーザーの見えない内面の反応を想像せねばならないUXをデサインするには、充分な観察や経験が必要である。UXデザインのための最も重要な技能は観察力であると言って差し支えない。
過去の自分の経験から必要な知識を引き出すのにも、ある意味、観察力に近い技能が必要である。
よく取り上げられるUXデザインの手法として「『ペルソナ(象徴的なユーザーモデル)』を設定する」というものがあるが、どれだけ細かにペルソナの属性を設定しても、観察に基づいてそのペルソナの受ける感覚や反応が適切に想像できなければ無意味である。
「カスタマージャーニーマップ(顧客の行動を旅にみたてて1枚にまとめたもの)」なども、単に手順やプロセスを時系列を追って並べるだけでなく、ストーリーの流れとして観察や経験に沿った説得力や納得感を持たせるところまで煎じ詰めてこそのものである。