東京大学大学院情報理工学系研究科 ソーシャルICT研究センター第5回シンポジウム「AI/IoTが拓く安全快適社会への展望」で、セコム顧問の小松崎常夫氏が、「AI/IoTによるサービスイノベーション そのために大切にすべき事」とのテーマで講演した。
小松崎氏は、1978年セコムに入社、技術部門や営業部門の責任者を歴任し、医療・防災・地理情報などの事業に携わってきた。2014年に常務執行役員に就任、2017年から現職となっている。
「イノベーションにはかなりの苦労が伴う」と語る小松崎常夫氏
セコムは、1960年代からオンラインセキュリティシステムによるサービスを展開するなど、ITを事業に積極的に生かす経営を行ってきた。画像診断技術やロボット技術などを積極的に取り入れ、2015年からはドローンによる警備サービスを提供するなど、常に業界をリードしている。
いわば「イノベーティブな企業」であるセコムで長く仕事をしてきた小松崎氏だが、「イノベーションと聞くと、大変だなぁという気持ちになる」と苦笑いをする。
「セコムはイノベーションが大好きな会社。しかし、実際にイノベーションを起こそうとするとセコムでも大変な思いをすることが多々あった。AI/IoTは確かにさまざまなイノベーションをこれからも起こしていくだろうが、自分の経験から、そのときに留意すべきことを話していきたい」
イノベーションは改善ではない。つらく険しい革新への道
現在セコムは、警備会社としての事業以外に、さまざまな安心にかかわるサービスを展開している。そのなかのメディカル事業において、小松崎氏は、在宅医療サービスを手掛けた経験がある。しかし、当初は各方面からさまざまな否定的な意見が寄せられたという。
どうして警備会社が医療事業をやるのか、そもそも在宅医療などにニーズはないというものから、医療を受ける側からも「病院でないと不安だ」といったものまで、否定的な意見は多岐にわたった。今では、在宅医療は当たり前のように受け入れられているが、1990年代前後の日本では、そうした意見が大半を占める状況だったのだ。
イノベーションと改善の違い
「イノベーションを改善であると考える人もいるが、本来、イノベーションとは、現状を否定してあるべき姿を実現すること。そのときには、これまでのルールやプロセス、仕組み、組織のすべてが根底から革新されることになる。したがって、イノベーターの考え方は簡単に周囲から理解されることはなく、尊敬もされず、つらい立場に立つことがほとんどだ」
それでも、イノベーションを起こそうとするモチベーションはどこから生まれてくるのか。小松崎氏は、「社会を想い、人を大切にしようという心だ」と話す。