Enslin氏はとくにSAP Cloud Platformについて、「SAPのPaaSとしてアプリケーションを容易に開発できるほか、どのIaaS上でも利用できるオープン性を備えている。まさしくパブリッククラウドサービスとしてユニークな存在だと自負している」と説明。そのうえで、「これだけ強力な内容のデジタルビジネスフレームワークを持つベンダーは他にいない」と語った。
顧客向けのイベントでこうしたフレームワーク図を示したのは、取りも直さず、SAPは企業のデジタル化に対してすべて支援できるとのメッセージを伝えたかったからだろう。それを意図してか、、Enslin氏が最後に「デジタルトランスフォーメーションには終わりがない」と語っていたのも印象的だった。
「コグニティブ技術の活用などで運用の高度化を図っていきたい」
(日本IBM 澤 崇 製品統括部長)
日本IBMの澤 崇 製品統括部長
日本IBMが先頃、ハイブリッドクラウド環境に対応したアプリケーション性能管理(APM)ツール「IBM Cloud Application Performance Management」を提供開始すると発表した。同社のIBMクラウド事業本部クラウド・ソフトウェア事業部で製品統括部長を務める澤氏の冒頭の発言は、その発表会見で、真のITサービスマネジメントに求められる要件について語ったものである。
新製品は、ハイブリッドクラウド環境で稼働する複数のアプリケーションの複雑なパフォーマンス障害や可用性を検知するツールである。その概要については関連記事をご覧いただくとして、ここでは澤氏の冒頭の発言をめぐる話を取り上げたい。
テーマは「真のITサービスマネジメントの実現に向けた運用の高度化」である。澤氏はまず運用管理の課題として、「運用管理担当者のスキルが不足している」「運用管理の自動化ができていない」「システムの一元管理ができていない」「運用管理担当者の人数が不足している」などを挙げ、ハイブリッドクラウド環境においてはオンプレミスとクラウドそれぞれに特有の課題もあると説明した。
ではこうした課題に対応して、真のITサービスマネジメントを実現するにはどうすればよいか。これに対し、澤氏は図を示しながら、「これまでの運用管理は、監視やジョブ、バックアップなど個別の運用機能を提供してシステム要件の充足だけを目的としていたところがあるが、真のITサービスマネジメントに向けては、自動化推進、可視性向上、コグニティブ技術の活用によって運用の高度化を図っていく必要がある」と指摘した。
図:真のITサービスマネジメントに求められる要件
そして、まさしくその「自動化推進、可視性向上、コグニティブ技術の活用による運用の高度化」を図っていることが、IBMのハイブリッドクラウド環境における運用管理の最大の特徴であり、差別化ポイントだと強調した。
振り返ってみると、IBMのシステム運用管理パッケージにおける歴史は、1996年に買収したTivoliから始まっている。それから20年余り経ち、関連データも相当蓄積されているだろう。その意味では、コグニティブ技術の活用は効果的かもしれない。