ネットワーク関連製品を手掛けるCisco Systemsが作成したレポート「Cisco 2017 Midyear Cybersecurity Report」(シスコ2017年中期サイバーセキュリティレポート)によると、エンタープライズセキュリティという観点から見た場合、クラウドは死角を作り出してしまっているという。
同レポートは、クラウドがハッカーらにとってまったく新たな開拓地であり、企業による「ミッションクリティカル」なクラウドシステムの稼働が増えるにつれて、アタックベクタとして研究、悪用されるケースが増えてきていると記している。
また、クラウドシステムに侵入することで、それに接続されているシステムにも手早く侵入できるという事実にハッカーらが気付いたとも記している。
同社の観測によると、洗練性に差こそあるものの、2016年末からクラウドシステムを標的にした攻撃活動が増加しているという。
2017年1月、Ciscoの研究者らは、総当たり攻撃(ブルートフォースアタック)を用いて企業システムへのログインを試みている攻撃を検出した。同社によるとこのハッカーらは、検証済みの企業ユーザー認証情報を収集したライブラリを作成しており、20種類の怪しいIPアドレスを用いて複数のサーバからさまざまな企業のクラウド配備に対するログインを試みていたという。
同レポートは、ユーザーパスワードを直接やり取りすることなく、エンドユーザーのアカウント情報をFacebookなどのサードパーティーのサービスから使用できるようにする「Open Authorization」(OAuth)というテクノロジは、クラウドの使用を容易にするという目的を持っているものの、実際のところはリスクも生み出してしまっていると記している。
このレポートは「OAuthのリスクに加えて、特権ユーザーアカウントがたった1つ適切に管理されていないだけで、悪意を持ったハッカーらが容易に侵入できるようなセキュリティ上の隙が生み出される。彼らは既にクラウドに狙いを定め、企業のクラウド環境に侵入しようと執拗(しつよう)な攻撃を続けている」と記している。
Ciscoによると、これまでで最大級の侵入事例のいくつかは、特権を持ったユーザーアカウントのうちの1つが攻撃され、悪用されたところから始まったのだという。