クラウド事業がNTTグループの「主力」になる日
同じNTTグループだが、これまではNTTデータがシステムインテグレータ、NTT Comがキャリアとして活動してきた。その棲み分けを越える形で推進していく必要が出てきたのが、クラウド事業である。サービスの内容やビジネスの仕方には違いがあるが、とりわけデータセンター設備、つまりはインフラ部分において、NTTグループとして効率化を図れる可能性が高い。
そこで筆者はここ2年、NTT Comの庄司哲也社長が経営方針などの説明で会見を行うたびに、NTTグループとして重複しつつあるクラウド事業をどう展開していくのか、と質問してきた。庄司氏はそのたびに次のように答えていた。
「NTTグループとして今後クラウド事業をどう展開していくかは課題になっており、持ち株会社主導で関連会社が集まってさまざまな角度から検討している。その検討結果については、持ち株会社から説明させていただくことになる」
この庄司氏のコメントからすると、今回は国内外でクラウド事業を積極的に展開しているNTTデータとNTT Comによる新しい取り組みの発表で、持ち株会社は表に出てきていないが、NTTグループのクラウド事業再編への動きがそろりと始まった、というのが筆者の印象である。とりわけ両社の事業連携は、先述した思惑にあるように国内のみならずグローバルへの広がりを見据えたものと見て取れる。
今回の新たな取り組みがうまく行けば、両社の事業連携は一層深化していくだろう。さらに進めば、両社が生み出したきめ細かいクラウドサービスを、同じく国内津々浦々でビジネスにしたいNTT東日本およびNTT西日本との連携が図られるかもしれない。そうなれば、持ち株会社の出番だろう。あとはグループ内でも異質なNTTドコモがどのような形になるか。
持ち株会社が主導する形になれば、それはおそらく事業の連携にとどまらず、効率を追求した「再編」になるだろう。NTTグループにとってクラウド事業はまだ「微力」だが、果たしてその再編をスピーディーかつダイナミックに進めて「主力」に育て上げることができるかどうか。そこにNTTグループの将来がかかっているのではないだろうか。