「企業向けのソフトウェアのうち、CRM(顧客関係管理)が最も急速に伸びている。他の3つ(OS、ERP、DBMS)は過去の産物だ。世界中がCRMへと向かっている」ーー。セールスフォース・ドットコムは2017年9月26日から2日間、プライベートイベント「Salesforce World Tour Tokyo 2017」を開催した。
初日のキーノート講演「BLAZE YOUR TRAIL-新たな道を切り拓こう」では、米Salesforce.comでVice Chairman, President and COOを務めるKieth Block氏が登壇。市場でのSalesforceの状況、クラウドサービス群のビジョン、直近の機能強化点などについて解説した。
米Salesforce.comでVice Chairman, President and COOを務めるKieth Block氏
米Salesforce.comの売上額の実績は、2011年度が17億ドル、2017年度が84億ドルである。「(1999年2月に設立してから)わずか19年しか経っていないが、年商100億ドルに達しようとしている」。Block氏は、米Salesforce.comは成長速度が最も速いソフトウエア企業であるとアピールする。
営業支援分野ではSalesforce Sales Cloudが34.2%のトップシェアを持つ。2位は米Oracleで15.3%、3位はドイツのSAPで14.5%である。カスタマーサポート分野ではSalesforce Service Cloudが33.7%で1位。マーケティング自動化のSalesforce Pardotもシェア9.9%と伸びており、2016年には米Adobe Systemsを抜いて1位になったという。
日本法人のセールスフォース・ドットコムは、2000年に設立。社員は1100人、認定資格者は9300人、パートナーは370社をそれぞれ超えている。国内に2つのデータセンター(東京と大阪)を持っている。市場調査会社の予想では、日本法人は日本国内で2020年に24万人の雇用を生む。「日本の社会の仕組み作りにも貢献したい」(セールスフォース・ドットコム代表取締役会長兼社長の小出伸一氏)
信頼・成長・イノベーション・平等がSalesforceのコアバリュー
Block氏は、Salesforceの中核となる価値として、(1)信頼、(2)成長、(3)イノベーション、(4)平等の4つを挙げる。
(1)の信頼は最も重要であり、信頼なくして何も手にすることはできない。(2)の成長も重要であり、成長のために日々イノベーションを起こして変化を促す必要がある。(3)のイノベーションは米Salesforce.comのDNAの一部だとBlock氏は言う。「どのようにして成長するかを常に考えている。年間3回のバージョンアップで機能を強化している。イノベーションなくして成長はない」(Block氏)
(4)の平等(イコーリティ)も大切である。給与格差を是正し、職業訓練プログラムなどの教育にも注力する。「平等は機会。全員にとっての平等を実現すれば社会は繁栄できる」(Block氏)。米Salesforce.comは、年間3500万ドルを教育に投資しているという。
社会貢献にも注力し、同社独自の1-1-1モデルを実践しているという。まず、就業時間の1%(230万時間)を地域活動に充てている。また、株式の1%(1億6000万ドル)をNGO/NPOに助成している。さらに、提供している製品サービスの1%を3万1000社のNPOや教育機関に提供している。
環境にも注意を払っている。「米Salesforce.comはカーボンニュートラル。カーボンオフセットにより、CO2の排出量は実質ゼロだ」(Block氏)
学習プログラム「Trailhead」でSalesforceエコノミーに参加しよう
Salesforce World Tour Keynote「BLAZE YOUR TRAIL-新たな道を切り拓こう」の会場風景
第4次産業革命の現在、技術は日進月歩で進化しているとBlock氏は言う。「60億台の携帯電話と750億台のスマートなモノがネットにつながっており、この先には顧客がいる。ビジネスチャンスがある」(Block氏)
例えば、米Salesforce.comの1日を見ると、280万件の商談を作成し、100万件の商取引の注文処理を行い、マーケティングでは14億件のメールを送信している。
Salesforceエコノミーへの参加がビジネスチャンスを広げるとBlock氏。「Salesforceエコノミーによって生まれる経済価値は2020年までに4000億ドル以上、雇用にして200万人に相当する」(Block氏)
Salesforceエコノミーに参加する方法は簡単だと話す。「Salesforce Trailheadと呼ぶ学習コンテンツを用意している。ゲーミフィケーション感覚で取り組める」(Block氏)。Salesforceのクラウドサービスについて楽しく学べる場だという。このプログラムで学びスキルを身に付けた人材は「Trailblazer」(先駆者)と呼ばれる。世界で40万人以上のTrailblazerがいるという。