本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米Red HatのJim Whitehurst 社長兼最高経営責任者(CEO)と、シスコシステムズの濱田義之 執行役員 最高技術責任者(CTO)兼最高セキュリティ責任者(CSO)の発言を紹介する。
「最大のライバルは自分自身だ」
(米Red Hat Jim Whitehurst 社長兼CEO)
米Red HatのJim Whitehurst社長兼CEO
米Red Hatの日本法人レッドハットが先頃、プライベートイベント「Red Hat Forum Tokyo 2017」を都内ホテルで開催したのに伴ってJim Whitehurst氏が来日したのを機に、記者会見を開いた。Whitehurst氏の冒頭の発言はその会見で、「現在のRed Hatの最大のライバルはどこか」と聞いた筆者の質問に答えたものである。
Whitehurst氏は会見の冒頭で、「Red HatはOS、仮想化、インフラ管理、ミドルウェア、クラウド管理、PaaS、ストレージといった領域でビジネスを展開している。これらを合わせた市場規模は2020年に660億ドルになると予測されており、2017年度(2017年2月期)で24億ドルの売上高だった当社としては、これからさらに大きな事業機会があると考えている」と語り、Red Hatがさらなる成長を遂げる可能性を示した。
また、直近の2018年度第2四半期(2017年6〜8月)の売上高は前年同期比21%増で62四半期連続増収を記録。全体のうち67%を占めるインフラ関連製品が同14%増と着実に伸びたとともに、アプリケーション開発・新興テクノロジ製品が同44%増と高い伸びを示した。ちなみに、インフラ関連製品とはOSの「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」、アプリケーション開発・新興テクノロジ製品とはOS関連製品を除く新しい領域のことを表している。(図参照)
図:Red Hatの2018年度第2四半期(2017年6〜8月)の業績
会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは冒頭の発言をめぐる質疑応答でのやりとりについて取り上げておきたい。先述したように、現在のRed Hatの最大のライバルはどこか、と聞いたところ、Whitehurst氏は冒頭のように発言したうえで次のように続けた。
「最大のライバルが自分自身である理由は、Red Hatのユニークな立ち位置にある。当社は、オープンソースの技術とその開発コミュニティー、そして企業向けサポートの間に立ってビジネスを展開しており、同じ立ち位置でライバルと目される存在は見当らない」
ただ、一方でこうも語った。
「それはクラウドの時代になっても同じで、クラウドサービスプロバイダー各社ともパートナーシップを結んでいる関係にある。ただし、そうしたプロバイダーで自社用のLinuxを手掛けてロックインするような形になると、そのLinuxとは必然的に競合関係になる。例えば、Amazon Web Services(AWS)が提供しているLinuxはAWSでしか使えないので、そういう関係になるだろう」
確かに、AWSのLinuxはAWS自体の影響力の大きさからみて、Red Hatにとっては脅威になるかもしれない。それでも「最大のライバルは自分自身」と語ったWhitehurst氏の表情に、「我が道を行く」との自信と覚悟が見て取れた。