本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米VMwareのPat Gelsinger CEO(最高経営責任者)と、ガートナージャパンの長谷島眞時エグゼクティブプログラムグループ バイスプレジデント兼エグゼクティブパートナーの発言を紹介する。
「VMwareは10年後もなくてはならない存在であり続ける」
(米VMware Pat Gelsinger CEO)
米VMwareのPat Gelsinger CEO
ヴイエムウェアが先頃都内のホテルで開催した自社イベント「vFORUM 2017」において、米VMwareのPat Gelsinger CEOが基調講演を行うとともに、その後記者会見にも臨んだ。冒頭の発言はその会見で、筆者の質問に答えたものである。
まず、Gelsinger氏の講演で筆者が印象深かったのは、エッジコンピューティングとクラウド戦略の話だ。
VMwareは「Any Cloud, Any Application, Any Device」というビジョンを掲げているが、Gelsinger氏は新たな領域として「IoT(モノのインターネット)の進展に伴って、今後エッジコンピューティングの利用が広がり、エッジに適用するアプリケーションやサービスが爆発的に増えていくだろう」と予測。同社としても関連ソリューションに注力していくという。
また、クラウド戦略では、オンプレミスとクラウドのハイブリッド利用やマルチクラウド利用が今後の主流になるとして、「異なるクラウド間でも一貫性のあるインフラ」および「全てのクラウドで一貫性のある運用」を実現する図のような利用環境を提供していく構えだ。
図:VMwareのクラウド戦略
こうした話を聴講した上で、筆者は会見であえて「10年後、もし企業においてパブリッククラウドの利用が中心になっていたとしたら、VMwareはどのような存在になっているか」と質問してみた。同社はプライベートクラウド向けビジネスが中心なので、パブリッククラウドの利用が中心になると、存在感がなくなってしまうのではないかと考えたからだ。これに対し、Gelsinger氏は次のように答えた。
「企業におけるクラウドの利用形態は、10年後もハイブリッドやマルチクラウドが中心になっていると見ている。VMwareはそうした環境のインフラを整備したり、つなぎ合わせたり、一元管理したり、安全に利用したりするためのソフトウェアを提供しており、そのユーザーニーズは10年後も変わらないだろう。従って、VMwareは10年後もなくてはならない存在であり続けると確信している」
冒頭の発言は、このコメントの最後の一文を取り上げたものである。Gelsinger氏の質疑応答での話を聞いていてもう1つ感じたのは、今後の多様なIT利用環境に柔軟に対応できるソフトウェアベンダーであることの確固たる自信だ。グローバルで50万社を超える顧客数がその裏付けになっていると言えよう。筆者の仮定の質問にも丁寧に答えてくれた同氏の姿も印象的だった。