展望2020年のIT企業

ソフトテスト業から品質保証業へと変革するSHIFT

田中克己

2017-12-07 07:30

 ソフトテストを展開するSHIFTが品質保証業、さらに「無駄をなくしたスマートな社会」を実現する事業構造への変革に挑戦し始めている。見据えているのは、売上高1000億円のビジネスモデル。具体的には、テストから開発、UI/UX、BPO、ファクタリング、マーケティング、人材紹介などへとビジネスを広げる計画。成長のカギは、手がけたテストの案件とエンジニアのデータベースにある。

テストから開発、UI/UXなどへと事業範囲を広げる

 2005年に設立したSHIFTは、業務改善や改革に関するコンサルティングから事業をスタートした。その中で、ある企業からECシステムのコスト削減など効率化に関するコンサルティングを引き受けたのを契機に、業務システムやアプリケーションソフトのテストへと舵を切っていった。

 テストのアウトソーサーとして、ユーザーのプロジェクトに参加し、実績を積み重ねながら、テストの方法論とビジネスモデルを編み出す。テストエンジニアの育成に必要な教育コースを作成したり、テスト実行スキルを評価する検定試験を独自開発したりした。そして、丹下大社長兼CEOは「テストエンジニアの年収を1500万円にする」と、テストエンジニアの役割に見合う待遇、処遇を実現させる考えだ。

 人材採用も活発化だ。アルバイトを含めて年間約400人のエンジニアを採用し続けて、グループのエンジニア数(パートナや有期雇用も含む)は2017年8月期第4四半期に前年同期の7割増の1563人(うち正社員は849人)になった。今期は倍以上の約1000人の採用を計画する。

 手がけるテスト案件の単価も、着実に高くなっている。顧客企業からの平均月額売り上げは現在、399万円だが、最近注力する流通業は895万円、金融業は852万円と倍以上になる。この2つの売り上げ構成比も、2017年8月期の第1四半期の18.2%から第4四半期には32.3%と高まっている。ちなみに、2017年8月期の売上高は前期比48.3%増の81億7400万円と大きく成長した。今期も50%増近い120億円を計画。丹下社長は「テスト市場で、シェアナンバー1を獲得した」と自負する。

 丹下社長は、顧客ニーズと産業構造の変革をにらんでいる。そこにビジネスチャンスがあるからだ。1つは、国内のシステム開発需要が減っていくこと。しかも、小型化、多様化し、得意技を持つ中小IT企業やクラウドソーソングによる個人事業主のエンジニアへの発注が増加する。個人の発注が増えて、スピードが求められる。丹下社長は家にたとえる。一軒家を建てる人もいるし、共同アパートをリニューアルしたり、高級マンションを利用したり人もいる。だが、建てる価値が下がり、利用の価値が増す。それに応えられるビジネスモデルへの変革が問われるということ。

 もう1つは、開発しても使われないシステムが数多くあること。理由はいろいろある。システム開発作りに問題があったり、使い勝手が悪かったりする。ユーザーの事業構造にフィットしていないこともある。そんな無駄をなくすためにも、テストだけではなく、開発やUI/UX、ファクタリング、マーケティングなどへと品質保証のビジネス範囲を拡大させる。それらに関係する企業を買収することもあるし、グローバルな展開もする。すでにベトナムには現地法人を設立し、テストのオフシェアを開始している。

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