リコーに聞く、デジタル時代の“ブレない”クラウドの使い方

國谷武史 (編集部)

2017-12-11 08:00

 いま多くの企業に突き付けられている課題が、業績を支える既存のビジネスに加え、デジタル技術を生かした新規のビジネスへのチャレンジだ。そのゴールは、既存ビジネスから新規ビジネスへのシフト、あるいは両者の融合によるビジネスモデルの変革かもしれない。

 複写機ビジネスを中核に「オフィス」を得意領域としてきたリコーは近年、その領域を「業務の現場」、さらには「社会」に広げようとしている。同社はこのビジョンを「エンパワーリング・デジタル・ワークプレース」と呼び、2016年6月に位置情報を活用したビジネスに参入し、第一弾として北海道の札幌道都病院に医療従事者や患者の動きを把握するサービスを始めた。同年10月には異業種パートナー6社と共同で「スマートコムラボラトリーズ」を設立し、地域活性化につながる「スマートコムシティ」ソリューションのプラットフォーム提供にも乗り出した。


リコーは「エンパワーリング・デジタル・ワークプレース」というデジタル技術を利用したビジネスモデルの変革を目指す

リコー オフィスサービス事業本部 ワークプレイス ソリューション センター サービスプラットフォーム開発室の谷口竜氏

 オフィスサービス事業本部 ワークプレイス ソリューション センター サービスプラットフォーム開発室の谷口竜氏は、「新しい領域を広げる上で従来はできなかったことをできるようにするためにデジタル技術を活用する」と話す。その肝となるのがクラウドだ。

 クラウドの活用を考える前提として谷口氏は、既存ビジネスと新規ビジネスの特性の違いを挙げる。同社のような製造業の場合、既存ビジネスでは商品を大量生産し、利用者が商品を認知し、商品自体もコモディティ化している。市場は成熟しており、そこでの価値には、例えば「良いモノを安く」といったものがあるだろう。

 一方の新規ビジネスの市場は、商品の姿はもちろん、それが利用者に提供する価値、作り方や提供の仕方も定まっていない未成熟な領域となる。この中で商品を提供する側は、利用者の“期待”を手掛かりに、どのような“コト”で応えるのかを示さなければならない。定まったビジネスの“解”がなく失敗するリスクも伴うだけに、新規ビジネスの進め方においては、“スピード”と“柔軟性”の2つが必須だと、谷口氏は話す。

 この特性の違いを前提にITについてみてみると、既存ビジネスでのITは、市場の定まった商品に対するニーズを事業部門がくみ取ってシステムの要件を決め、IT部門はその要件をもとにベンダーとシステムを開発し、運用する。

 しかし新規ビジネスでのITは、市場が期待する中身が必ずしも明確ではなく、システムの要件を定めづらい。しかも、その期待が一瞬にして変化することもあり、システムには、市場の期待や動きの変化に耐え得るスピードと柔軟性の2つが必須になる。ビジネスを進めるには、事業部門やIT部門、時にはベンダーなども巻き込むパートナー型の体制が重要で、そのために適した仕組みがクラウドということになる。


既存ビジネスと新規ビジネスにおけるITの違い

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