ハードから読み解くITトレンド放談

スマートフォンからサーバへ進出するARMプロセッサ(後編)

山本雅史

2018-01-25 06:00

 前編では、ARMプロセッサの低消費電力性や高いパフォーマンスを生かしたサーバへの適用をめぐる歴史を紹介した。後編では、現時点で具体化している製品の特徴や将来性を解説する。

サーバに向けたARMプロセッサが登場

 QualcommのCentriq2400やCaviumのThunderX2は、サーバ向けに一から開発されたARMプロセッサといえる。今までのスマートフォンなど利用されていた英ARM(以下、ARM社)のCortex-A53/A73コアをサーバ向けに流用するのではなく、サーバ用途などを考えてパフォーマンスを重視したCPUコアの開発が行われている。逆に言えば、スマートフォンなどが持つ低消費電力性をある程度犠牲にしている。ただ、それでもX86/X64プロセッサよりは低消費電力だ。


Centriq2400はSamsungの10nmプロセスで製造されている。サーバ向けの設計はQualcomm自身が行った(Qualcomm資料より)

Centriq2400はクラウドインフラとなるサーバ向けに開発された

 QualcommのCentriq2400は、2017年11月に正式に発表され、Qualcommがサーバ向けに独自開発した「Falkor」コアが使用されている。Falkorコアは、64ビット命令(AArch64)のみをサポートしている(32ビット命令のAArch32はサポートせず、32ビット命令のコードは動作しない)。


Centriq2400は独自のFalkorコアを使用。2つのARM CPUコアとL2キャッシュで構成されている

 命令セットとしては、64ビット命令のARMv8をサポートしている。また、ARMの「TrustZone」(高度なセキュリティをサポートする実行環境)や仮想環境にも対応している。ただしARM社はARM V8.2-Aで、以下のサーバ向けの機能をアップデートしている。

  • 人工知能(AI)のニューラルネットワークで利用するベクトル演算機能をサポートする「Dot product and half-precision float」
  • Type2 仮想化機能のパフォーマンスを強化する「Virtualized Host Extensions」(VMware ESXiなどType1ハイパーバイザは以前からサポート)
  • キャッシュメモリの一部を外部からアクセスできるようにする「Cache stashing and atomic operations」(外部接続されるAIチップやネットワークチップなどからアクセスを高速化する)
  • 不揮発メモリを使ったメインメモリモジュールをサポートするための「Cache clean to persistence」
  • サーバにおけるRAS(Reliability:信頼性、Availability:可用性、Serviceability:保守性)機能をサポートする「Server class RAS」
  • CPUの動作状況を確認できる「CPU Activity monitoring」

 これらの機能がARMv8.2-Aに追加されている。現在ARM V8.2-Aをサポートしているのは、ARM社が2017年5月に発表したCortexA75/A55などだ。

 Centriq2400が使用しているFalkorコアは、2つのARMv8 CPUコアと512KBのL2キャッシュ、リングバス、パワーコントロールなどで構成されている。L2キャッシュは2つのARMv8コアが共有し、CPUコア数はモデルによって異なるが、最大48コアまで用意しされている。L3キャッシュに関しては、Falkorコアごとに2.5MBが用意される。L3キャッシュは全てのFalkorコアで共有するため、48コアの場合は60MBになる。


Centriq2400は、CPU部分だけでなく、ストレージやネットワークなどのインターフェースをSoC化している

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  2. セキュリティ

    マンガでわかる脆弱性“診断”と脆弱性“管理”の違い--セキュリティ体制の強化に脆弱性管理ツールの活用

  3. セキュリティ

    情報セキュリティに対する懸念を解消、「ISMS認証」取得の検討から審査当日までのTo Doリスト

  4. セキュリティ

    ISMSとPマークは何が違うのか--第三者認証取得を目指す企業が最初に理解すべきこと

  5. セキュリティ

    クラウドセキュリティ管理導入による投資収益率(ROI)は264%--米フォレスター調査レポート

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]