ビジネスAIを強みとした企業向けプロ連合に
今回の提携強化の発表からみて、両社のパートナーシップは着実に進展しており、今後さらに深まって“特別な関係”になりそうだ。筆者がそう感じる理由は2つある。
1つは、IBMのWatsonもSalesforceのEinsteinも「ビジネスのためのAIプラットフォーム」だからだ。これは、全方位に展開するGoogleやAmazon.comなどのAIプラットフォームとの違いを示すために、とりわけIBMがよく使っている表現だが、企業向けサービスを提供するSalesforceも同じだ。従って、両社のパートナーシップがさらに深まっていけば、「ビジネスAIとクラウドを強みとした企業向けプロフェッショナル連合」としての価値がますます高まっていくだろう。
もう1つは、先述したように、SalesforceがIBMをクラウドサービスプロバイダーとして、また、IBMがSalesforceのサービスをカスタマーエンゲージメントプラットフォームとして、それぞれ優先的に選定したことだ。これは両社の営業活動にも大きく影響する話だ。営業の観点からも、バックエンドに強みを持つIBMと、フロントエンドに強みを持つSaleforceの組み合わせは補完関係もあり、顧客に対してソリューションを提案しやすいのではないか。この方向で勢いがついていけば、両社の関係はさらに特別なものになっていく可能性がある。
Salesforceの日本法人であるセールスフォース・ドットコムでパートナーアライアンスを担当する北原祐司執行役員によると、「日本でも両社で連携した営業活動が順調に進んでいる」とのこと。折しもIBMにとっては、2017年10〜12月期決算で23四半期ぶりに増収に転じたタイミングで、反転攻勢の気運が高まっているところでの今回の動き。両社の関係はまだまだ次なるシナリオがありそうだ。
IBMとSalesforce.comの提携強化の発表リリース(IBMのサイトより)