市場の先行きが不透明ななか、産業分野における既存大手企業は生き残りを賭け、他社に先んじた行動が求められている。同分野の既存企業におけるデジタル変革は、今までの製造プロセスをより効率化するだけでは済まず、またそうあるべきでもない。これらの企業は、デジタル化によってもたらされる機会が、持続性のある、そして収益性の高い顧客関係を生み出し、変化する顧客ニーズに応えられるよう、製品の価値を継続的に調整していくための手段にあると認識しなければならない。
産業機械からデータを取得するというのは新しい考えではない
工場や発電所、物流企業、運送関連の業者は、かなり昔から産業機械のデータを活用してきている。彼らにとって、さまざまなものを相互に接続するというのは新しい考えではない。しかし、それら接続の多くはプロプライエタリなものであり、その原動力の多くは局所的かつ運用に由来するものだった。現場の責任者は自らが管轄する機械の運用状況といった一部のデータにアクセスしていたとはいえ、工場内に設置された機械間の連携はほとんどなく、他部門の管理者にとっての可視性も考慮されていないに等しかった。
しかし、顧客獲得と顧客奉仕、顧客維持に向けて業界がデジタル化を推し進めるなか、それでは十分とは言えなくなっている。
ABBやBosch、General Electric(GE)から日立やSchneider Electric、Siemensに至るまでの産業機械の大手プロバイダーは、自社と自社のマシンのデジタル化に向けて奔走している。彼らは、莫大な資金を投資し、自らに欠けているソフトウェアスキルを獲得するために企業を買収するとともに、製品やプロセス、エンゲージメントをデジタル化するためのチームを構築している。
産業分野のこれら大手プロバイダーにとって、変革の必要性は明確だ。しかも、彼らは状況に適応しなければならないという点と、数十年にわたる苦労の末に獲得した、優れた機械を生み出すという長所だけでは十分ではなくなっているという点を理解している。彼らは、これらの機械をデジタル化に対応したエコシステム内に取り込み、サプライヤーやパートナー、顧客とのより緊密かつ定期的なやり取りを行っていく必要があることを実感している。
どの企業も変革における過程のなかで時間と資金を投じ、意識を振り向けている。GEが公に推進している活動でも浮き彫りになっているように、その道は複雑で険しい。しかし、前に進んでいく必要はあり、今まさに取り組まれている話でもある。
こうした難題と機会の双方は、業界大手と取り引きしている小規模企業にとって、さまざまな点でずっと大きなものとなる。彼らにとって、Mentor GraphicsやPentahoといったソフトウェア企業に莫大な投資をすることなど思いもよらない話であり、風光明媚(めいび)なカリフォルニアにしゃれたデジタルラボを設置することなど夢物語にすぎないのだ。しかし、彼らも変わらなければならない。