
ESET 最高経営責任者(CEO)のRichard Marko氏
セキュリティソフトウェアメーカーのESETは2月20日、国内総販売元のキヤノンITソリューションズが開催したパートナー向けイベントで日本市場での2018年の事業方針を発表した。機械学習技術をもとにしたインテリジェンスサービスの拡充や、日本での事業拠点の開発などを予定する。
講演したESET 最高経営責任者(CEO)のRichard Marko氏は、同社にとって2017年が創業30周年、キヤノンITソリューションズとの協業が15周年の節目になったと振り返る。売上高は前年比9%増(日本は16%増)の約5億3900万ドルで、製品の導入台数は約6億台に達した。キヤノンITソリューションズによれば、国内ユーザーは個人が約600万人、法人が約37万社に上るという。
法人ユーザーの地域別割合は、本拠のスロバキアに近い欧州連合(EU)圏が25%、北米が18%で、国別としては日本が13%で最も多いという。これまでキヤノンITソリューションズが製品の開発支援や国内ユーザー向けのサポートを行ってきたが、ESET側でも新たに都内で事業拠点を設置する。Marko氏は、「ベンダーとしてもセキュリティサービスを日本のユーザーに直接提供したい」と語った。

ESETが国内に開設する拠点は法人向けのセキュリティサービスを行う

ESET 最高技術責任者(CTO)のJuraj Malcho氏
2018年の製品展開についてESET 最高技術責任者(CTO)のJuraj Malcho氏は、インテリジェンスサービスや、Endpoint Detection & Response(EDR:PC端末などにおける脅威の検出と対応)に注力すると説明。これらのもとになるという機械学習技術を1995年から利用していると強調した。
近年は、機械学習などの人工知能(AI)技術の採用をうたったセキュリティ対策製品が増えている。Malcho氏は、「機械学習がトレンドだが、不正プログラムの解析や分類の作業を自動化する目的で1995年から利用しており、目新しいものではない。ESETでは経験のある技術者が最終的に判断することで、機械学習による効率性と人間による信頼性を両立させている」と、“老舗”ベンダーとしての見解を示した。
インテリジェンスサービスは、“疑わしい”ファイルやコンピュータ上での動作などの情報を早期警戒のために利用できる。EDRは同社内で数年をかけて試行したソフトウェアを製品化したといい、標的型攻撃などを受けた端末の調査や調査に基づく被害抑止策を支援する。EDRはベンダーの参入が増えている新たなセキュリティ製品分野だが、Malcho氏はクラウド型が主流の中で、同社ではオンプレミスでも運用できるなどの差別化ポイントを挙げた。

AIはセキュリティでも半ばブームだが、ウイルス対策の“老舗”各社はその活用実績を強調している
また、従業員5~250人規模の中小企業を対象にしたクラウド型の管理コンソールもバージョンアップし、ハードウェアのインベントリ収集に対応したほか、セキュリティレポートのテンプレート数も増やすなど、管理者が求める機能を拡充させたとしている。