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コインチェック事件をどう解決するか--仮想通貨開発IOHKのCEOに聞く

怒賀新也 (編集部)

2018-03-08 07:30

 仮想通貨は、その急騰劇や取引所のコインチェックへのハッキング攻撃により、一時は異様なほどの関心の高まりを見せた。事件発生当時に580億円を超えたとされる被害額について、現在も補償問題を絡めた神経質な議論が続いている。今後の動きについて、関係者はどう見ているのか。仮想通貨「Cardano」の開発を手掛けるIOHKの創設者で最高経営責任者(CEO)を務めるCharles Hoskinson氏に、今後の仮想通貨やブロックチェーンの動きについて展望してもらった。

--はじめに、所属するIOHKについて教えてください。

IOHKの創設者で最高経営責任者(CEO)を務めるCharles Hoskinson氏
IOHKの創設者で最高経営責任者(CEO)を務めるCharles Hoskinson氏

 われわれはブロックチェーンのオープンソースソフトウェア(OSS)プロジェクトであるCardanoの開発を手掛け、暗号化通貨のプラットフォームを公平に管理できるよう努力している。OSSコミュニティーとしての側面と、ビジネスパートナーとしての側面を両立させながら、収益を上げている珍しい業態だ。東京工業大学やスコットランドのエジンバラ大学、ギリシアのアテネ大学と共同研究している。IBMのような研究開発、コンサルティング企業が旧だとすれば、暗号化通貨の基盤開発を管理することで事業者の商業的な成功を支援する新たなタイプの存在だ。

--日本で大きな問題となったコインチェック事件に、どのようにみていますか?

 事件自体は起こることは避けがたいものだ。解決については、失われれたお金をどう補償するかについて、社会に与えられる印象が論点になる。海外でもハッキング事件は起こってきたが、今回金融庁など、日本の関係者による対応策を世界中が見守っている状況だ。

 自分なら、取引所の保険制度を提案する。今回のような事件が起きたときに、一般の投資家がお金を取り戻せる保険の仕組みを整えるのだ。日本も導入可能なアイデアとして、金融庁が暗号通貨のライセンサーなどから一定額の供託金を募りプールすればいい。

 その際、金融庁は、自らハッカーの団体を抱え、取引所に仮想的なセキュリティ攻撃を仕掛ける。セキュリティが試される環境をつくった上で、それに屈せず安全性を担保できたライセンサーには、プールした供託金の一部を戻すような仕組みだ。

 これによりセキュリティの水準を上げ、透明性も担保できる。金融業界と大学が連携すれば、大学からハッカーを募ることも可能だ。コインチェック事件については、金融庁が主導し、情報を開示して、一般の方の取引所への信頼を取り戻すことが重要と考えている。

--仮想通貨については、ブロックチェーンの特徴でもある自律分散型の思想が重要とする考え方があり、以前起きたイーサリアムのハッキング被害でも論点になりました。金融庁が介入し過ぎると、中央集権的になり、分散型ではなくなるとの批判もあります。

 歴史は完全に一致せずとも、似た特徴を持ちながら繰り返す。国家として米国が樹立した際に、George WashingtonやAlexander Hamiltonは強い政府、すなわち中央主権を志向し、Thomas Jeffersonなどは非中央集権を目指した。この議論はいまだになされている。

 ブロックチェーンは、プログラム自体に「分散化」を書き込める特徴がある。また、中央集権と非中央集権のどちらかを決めるのではなく、1~10までのように徐々にその特徴を実装できる(Spectrumである)点も強みだ。

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