米Pure Storageは、5月22~24日の3日間に渡って米国サンフランシスコで年次ユーザーカンファレンス「Pure//Accelerate 2018」を開催した。発表が幾つも行われたが、“データ中心”という大きなIT環境の変化から見たそれらの意義を考察してみたい。
データ・セントリック・アーキテクチャとAIへの注力
今回のPure//Accelerateでの最も重要なメッセージは、“Data Centric Architecture”への取り組みが明かされた点だろう。アーキテクチャとは言っても、具体的な機器構成や接続の仕方が指定されているような話ではなく、ごくコンセプチュアルなものだが、これまで「理想的だが現実的ではない」と見なされていた「単一のストレージインフラで全てのアプリケーションのためのデータを供給する」構成がNVMe-oF対応のオールフラッシュ・ストレージであれば実現できるはず――という主張だ。これには、一定の説得力を感じるユーザーも多いのではないだろうか。
とはいえ、現時点で「すぐにシステム構成を全面刷新する」というのは無理があるにしても、ユーザーが今後のシステムを更新するタイミングで、段階的に統一されたストレージプラットフォームの構築に向けた取り組みを意識せざるを得なくなるかもしれない。
なお、“データ・セントリック”というコンセプトの強力な推進力となったのは、人工知能(AI)の急速な発展であることは間違いないだろう。これまでもデータは重要な情報資産と考えられてきたが、それは基本的に“重要な記録”という意味だった。しかし、機械学習/ディープラーニングといったデータ解析技術の進歩によって、データの集積から新たな知見を抽出できる可能性が高まった。しかも、この文脈では学習/解析するデータ量が多ければ多いほど、得られる知見の精度が高まることが期待されることから、ストレージの役割がさらに高まる結果となっている。
Pure Storageは、NVIDIAと共同開発した「AIRI」を既に発表しているが、今回新たに、より導入しやすい小さいサイズ構成の「AIRI Mini」を発表した。また、AIRIの発表時点では、NVIDIAのGPUベースの「AIアプライアンス」である「NVIDIA DGX-1」とPure StorageのFlashBladeをArista Networksの100GbEスイッチで接続する構成だったが、新たにAIRIおよびAIRI Miniで、Cisco Systemsの「Nexus9000」の100GbEスイッチを選択できるようになった。
Pure StorageとNVIDIAが共同開発した「AIRI」および「AIRI Mini」
AIRI単体で見た場合、スイッチがAristaであってもCiscoであっても、特段の機能の違いなどはないだろう。だが運用管理の都合などで使いやすい方を選べるようになったと考えれば、ユーザーにとっても歓迎すべき話だろう。大きな視点で言えば、Pure StorageとCiscoとの間に良好なパートナーシップが確立されたと見れば、これもPure Storageのユーザーにとっては安心材料となりそうだ。